運転資金(ワーキングキャピタル:WC)


■運転資金とは


運転資金とは、在庫投資や仕入の支払と売上の回収にズレが生じる場合に

発生する事業活動をしていくうえで必要な資金です。


この資金は、ワーキングキャピタルとも呼ばれ、working capitalという

英語表記の頭文字を取って、WCと略して呼ばれることもあります。


この資金のサイクルは、現金回収サイクルともいえるので、 この資金が発生している

期間のことを、現金循環化日数とも呼びます。


また、WCは、様々な名称で呼ばれていますが、運転資本、経常運転資金、

必要運転資金、所要運転資金、必要運転資本は、全て、この資金と同様の意味

で用いられています。


運転資金の管理に有効なのが、キャッシュコンバージョンサイクルで、

このサイクルは、Cash Conversion Cycleの頭文字をとって、CCCと略される

ことが一般的です。


この資金の現金循環化日数の計算式は下記の通りです。


キャッシュコンバージョンサイクルの計算式

・棚卸資産回転期間(DIO)+売掛債権回転期間(DSO)-仕入債務回転期間(DPO)


上記の計算結果は、回転期間の乖離を計算していますので、 キャッシュコンバージョン

サイクルの日数を計算することは、 回転期間乖離の日数を計算することともいえます。


現金循環化日数を計算して、計算結果が、プラスの数値になっている時に資金コストが

発生し、マイナスの数値になった時に、余剰資金が発生します。


ワーキングキャピタルの発生原因は、回収サイトや支払サイト、売上高の増加、

回収期間の長期化、支払期間の短縮などの変化が要因です。


WCが増加した場合は、増加運転資金の発生を意味しています。


ワーキングキャピタルの計算式

・WC = 棚卸資産残高 + 売掛債権残高 - 仕入債務残高


一般的に、この計算式で算出できるとの説明が多いのですが、 この計算式では、

運転資金を計算することは不可能です。


この資金の残高は、企業が営業活動を継続している限り、完全に寝ている資金

であるので、固定化された資金であるといえますが、その金額は常に一定して

いるわけではなく、売上高の増減や、回転期間の変化等により、絶えず変化しています。


この資金は商売の裏づけがある資金なので、一般的に、この資金の範囲内であれば、

銀行から短期の融資を受けることは、それほど難しくないと説明 されていることが

多いようです。


しかし、実際には、この資金の融資の申し込みでも、融資の申し込みが却下

される企業もあるわけで、銀行からこの資金を借りやすい企業とは、売上の増加

に伴い、増加運転資金が発生している、業績が好調な企業なのです。


この資金を利用した経営管理指標に、運転資金月商倍率があり、 この財務指標では、

必要運転資金を算出し、月間の売上高と比較することで、 企業の資金繰りの状態を

判断することであり、この数値が低いほど、資金繰りの 状態が良いと判断できます。


また、運転資金は、企業が急成長をしている時に、適切な財務管理が できていないと、

日を追うごとに増加していくものなので、この資金の 仕組みを理解せず資金繰りを

組んでいると、利益が多額に出ている 企業でも資金ショートを起こし黒字倒産に至る

危険性もあります。


ワーキングキャピタルを減らすと、営業キャッシュフローの改善に繋がりますので、

この資金を減らすことは、財務体質を改善するためのスタートラインであり、

財務戦略の基本ともいえます。


その改善策としてCCCを管理する必要がありますが、この管理には、運転資金計画

作成の際に計画した回転期間乖離と実績の回転期間乖離を定期的にチェックして、

そのギャップを直ちに埋める改善活動が出来るような、PDCAサイクルを運用する

ことが重要です。


ゆえに、運転資金をコントロールをする為に、売上債権回転期間、 棚卸資産回転期間、

仕入債務回転期間等の計画を立て、予算の貸借対照表(BS) を作成して、この資金の

予算実績管理をする必要があるのです。


そして、総合予算を作成する際は、WCの仕組みの理解が欠かせませんので、

この資金の仕組みは、経理部財務部経営企画部に所属する社員であれば、

必ず理解しておくべきことです。


ちなみに、中計で、WC計画を作成する際は、売上債権回転期間、 棚卸資産回転期間、

仕入債務回転期間を活用して作成します。


■運転資金の平均


ワーキングキャピタルを管理する際に参考になるデータは、 全産業、製造業、非製造業、

業種別の平均データがあります。


このWC業界別データを確認したい場合は、財務省の施設等機関である

財務総合政策研究所が公表している法人企業統計年報を活用して算定できます。


下記データは、平成25年度の法人企業統計年報を活用して算定した、運転資金の、

全産業、製造業、非製造業の企業規模別平均データです。


全産業運転資金平均データ

資本金 企業数(単位:社) 1社当りの運転資金(単位:円)
1千万円未満 1,702,125 6,883,583
1千万円~5千万円未満 947,933 37,426,610
5千万円~1億円未満 60,587 264,203,311
1億円~10億円未満 25,480 853,800,471
10億円以上 5,156 14,276,227,502
合計 2,741,281 57,843,391



製造業運転資金平均データ

資本金 企業数(単位:社) 1社当りの運転資金(単位:円)
1千万円未満 188,515 9,583,800
1千万円~5千万円未満 157,233 64,851,939
5千万円~1億円未満 12,395 398,303,509
1億円~10億円未満 6,395 1,360,538,702
10億円以上 2,070 18,218,680,676
合計 366,608 172,810,852



非製造業運転資金平均データ

資本金 企業数(単位:社) 1社当りの運転資金(単位:円)
1千万円未満 1,513,610 6,547,280
1千万円~5千万円未満 790,700 31,973,004
5千万円~1億円未満 48,192 229,712,691
1億円~10億円未満 19,085 684,002,672
10億円以上 3,086 11,631,743,357
合計 2,374,673 40,094,425