運転資金の考え方


運転資金の考え方が身についてない方や運転資金の計算式に疑問を持っている方も、

この資金が増えると資金繰りが楽になると思う方は、 さすがにいないと思います。


その理由は、大多数の方は、運転資金(ワーキングキャピタル:WC)と聞くと、

お金がでていくことであると認識しているからです。


確かに、ワーキングキャピタルは、商売をするうえで必要になる資金なのですが、

どこまでがWCの対象になるのかについては、人によって認識が異なっています。


そうすると、一口に運転資金といっても、人によって運転資金と認識している対象範囲

が異なりますので、運転資金に関する話をする際は、 その対象範囲について確認する

必要があるのです。


広義の運転資金の範囲としては、商品の仕入代金支払、販管費の支払、 立替金の支払、

預り金の支払、貸付金の支出、税金の支払、支払利息の支払、 借入金返済、設備投資

の支払など、事業活動をするうえで支出されるもの全てが対象となります。


この最も広い運転資金の範囲については、会社で支出される全てのものが対象となって

いるので、誰しもが頭を悩ませることなく理解できるはずです。


広義の運転資金の範囲があれば、それと対極をなす、狭義の運転資金というものが

存在するわけですが、この狭義の運転資金こそが、経営者の皆さんや、 企業で数字を

扱う経理部や財務部で働く皆さんを悩ませるものなのです。


この狭義の運転資金が、財務上の運転資金と呼ばれるものなのですが、 ここで皆さん

に理解して頂きたいこととしては、この財務上の運転資金の考え方 が、しっかりと

身についていなければ、精度の高い予定資金繰り表を作成 することは不可能だと

いうことです。


この予定資金繰り表の作成について、誤解をされている方が非常に多いので簡単に

説明をしておきますが、予定資金繰り表を作成することは、 予算(財務計画)を作成

することと、ほぼ同じことなのです。


そうすると、もし、予定資金繰り表は作成できるが、予算(財務計画)を作成する

ことはできないとおっしゃる方がいるとすれば、それは完全に矛盾したことであり、

その人は、自分で、ちゃんとした予定資金繰り表を作成 するスキルがないと言っている

ことと同じことなのです。


また、予定資金繰り表は、間違っても、単純に入金予定と支払予定だけを集計した表

ではないということを認識する必要もあります。


余談になりますが、経理や財務の転職時面接において、面接官が、 「資金繰り表を作成

した経験はありますか」 と尋ねて、皆さんが、「作成経験はあります」と答えた後に、

面接官が、 「予算(財務計画)を作成した経験がありますか」と質問をして、皆さんが、

「作成経験はありません」と答えると、面接官が、どのように思うかは説明するまで

もないですよね。


皆さんが、面接においてそのような返答をした場合は、面接官は、皆さんが、 虚偽の

返答をしていると思うか、資金繰り表の作成や予算の作成について何も知らないと

評価するわけです。


話を本題に戻しますが、財務上の運転資金の考え方は、難解な理論ではないのですが、

経営者はいうに及ばず、経理や財務の仕事に携わっている人の 多くが、財務上のWCの

考え方が理解できていないのが現状なのです。


財務上の運転資金の理解を妨げている最大の原因は、一般的に知られている、 運転資金

の計算式にあると考えられます。


このワーキングキャピタルの計算式とは、ほとんどの運転資金を解説する本や ネット上

では、下記のように説明されています。


・棚卸資産+売上債権-仕入債務


上記の計算式は、経理や財務の仕事に携わる方なら、一度は目にしたことがあるもの

でしょうが、ほとんどの方は、最初に上記の計算式を目にしてしまう ので、運転資金の

理解が妨げられてしまうのです。


仮に、上記の計算式を100人に見せても、ワーキングキャピタルの本質が理解できる人

は、おそらく1人位ではないかと思えるほど、上記の運転資金の計算式が、WCの本質を

見えなくしてしまっているのです。


結論を説明すると、上記の計算式で金額を計算したとしても、正確なWCの金額を知る

ことは不可能なので、上記の計算式で算出した運転資金が、 自社のワーキングキャピタル

の金額であると思ってはいけないのです。


このような解説を目にすることは、大半の方がはじめてだと思いますが、 財務のプロの

立場からすると、これは基本的なことであり、このことを理解 していなければ、企業に

おいて、キャッシュフローの改善をすることは不可能ですし、企業において、資金繰り

を担当することも不可能なのです。


一般的に知られている運転資金の計算式は、本当の運転資金を左右する数値を計算する

際に用いられた計算式を、単純に利用しているにすぎないので、 意味のない金額を計算

してしまう原因になっているのです。


意味のないワーキングキャピタルを計算しても何の役にも立ちませんし、 役に立たない

だけではなく、正確に運転資金の増加を見通せなければ、 人為的なミスで資金ショート

をしてしまう可能性も十分にありえるのです。


このように、経理や財務の仕事に携わる大半の方が、WCの考え方が身についていない

理由は、一般的に知られているWCの計算式自体 に問題があることは明らかなので、

経理の仕事や財務の仕事に携わる方は、 本当の運転資金の仕組みを理解する必要が

あるわけです。


なお、この資金に関する考え方や、この資金の本当の計算式を理解する入口は、

キャッシュコンバージョンサイクルにあります。