短期借入金と長期借入金のバランス


ある時、財務部の担当者である皆さんが、社長から、

「今後の金利動向が気になるから、我が社の短期借入金と長期借入金の

バランスをどうするべきか調査分析して報告してくれ」、

と指示された場合、皆さんは、対処方法が直ぐに頭に浮かびますか?


短期と長期の借入金のバランスは、企業の財務にとって重要な問題

ではありますが、何故、短期債務と長期債務のバランスを考慮する

必要があるのでしょうか?


このように質問すると、大半の皆さんは、短期と長期の借入金を比較すると、

資金調達コストが大きく異なるからと答える方が多いのではないでしょうか。


確かに、有利子負債に関しては、短期の債務より長期の債務の方が金利コスト負担が

大きくなるのですが、資金調達コストだけを見ていては、財務の本質を見誤ります。


長短借入のバランスの本題に入る前に、金利についての話をして見たいと思います。


2014年現在の企業の資金調達コストは、日銀の量的金融緩和政策の影響

で低位安定していますが、皆さんの会社では、金利が急騰する状況を

シミュレーションしていますか?


金利が低位安定している時代に慣れてしまうと、永遠に低金利が続かの様

な錯覚に囚われてしまいますが、現在は、金利が急騰する条件は、

ほぼ揃っているといえる状況なので、何かの切っ掛け次第で、

何時、金利が急騰してもおかしくない時期に突入しています。


このような危うい経済状況において、皆さんの会社では、金利が急騰した

場合に、急増する金利負担に耐えることができるでしょうか?


当然、金利がどれくらいの水準まで上昇するかによって変化するでしょうが、

金利が急騰した場合の金利水準については、自分達で勝手な推測をするの

ではなく、過去の金利の歴史をチェックしておくべきです。


例えば、過去には、企業の調達金利が10%前後位の時期も普通に

ありましたので、金利が急騰した場合のシミュレーションをする場合は、

それくらいの金利水準は念頭に置くべきでしょう。


しかし、これから訪れるであろう金利の急騰は、日銀の異次元金融緩和

と日本国債の巨額発行残高が影響して、過去の経験則が当てはまらない

場合があることも頭の片隅に入れておく必要があります。


話を、元の話題に戻しますが、財務担当者としては、何を重視して

短期借入金と長期借入金のバランスを取るべきだと考えますか?


ここまでの説明を御覧頂いた方は、当然、現在の資金調達コストだけでなく、

将来の資金調達コストも考慮して、短期債務と長期債務のバランスを

決定するべきだと考えることでしょう。


当然、金融動向にも気を配り、将来の資金調達コストをも考慮して

決定すべきなのですが、債務の長短バランスを決定する際の、

最も優先すべき重要な要素は他にあります。


この最も優先すべき重要な要素が何かを理解していないことは、

財務担当者としては致命的であり、資金繰りやキュッシュフローの

管理方法についても理解できていないことと同じなのです。


では、この最も優先すべき重要な要素とは、どんなことでしょうか?


それは、資金繰りやキュッシュフローの安定です。


資金繰りやキャッシュフローが不安定な会社は、自社を取り巻く

外部環境が何らかの変化を起こした時に、資金ショートを起こす可能性

が高くなります。


外部環境の変化で最も怖いのが、銀行から新規の融資が受けられ

なくなったり、既存の借入金の期日が到来した際に、借り換えを

してもらえない時ですが、そのような状況に追い込まれて、自社の資金繰り

に余裕がある企業が、はたしてどれくらいあるでしょうか?


そうすると、財務担当者は、不測の事態に備えて、常日頃から短期借入金

と長期借入金のバランスを取っておかなければ、内部環境や外部環境に

何らかの変化が起こってからでは、対応することができないのです。


ここまでの説明で、資金調達コストよりも、資金繰りやキュッシュフロー

の安定の方が、より重要であると御理解頂けたかと思います。


それでは、何を基準にして、債務の長短バランスを決定するべきなのでしょうか?


それは、貸借対照表のある勘定科目を基準にすることで、

現在の自社の短期と長期の借入金のバランスが適切であるか

否かが簡単に把握することができます。


そして、このポイントは、貸借対照表を分析する際のポイントでもあるのです。


このような資金繰りやキュッシュフローに直結するようなことを理解しておかな

ければ、一人前の財務の仕事ができるようにはならないわけです。


このように、短期と長期の借入金のバランスを考慮する際は、資金調達コストよりも、

資金繰りやキュッシュフローの安定を重視して、債務の長短バランスを決定するべき

なのです。