棚卸資産の種類


■棚卸資産とは

棚卸資産の評価は、売上総利益率(粗利益率)を左右するポイントなので、

在庫の評価方法に、どの方法を採用するかは、重要な経営判断といえます。


また、経理部の業務における決算業務においても、棚卸資産の評価によって、

売上原価が変動しますので、棚卸資産は重要な論点といえます。


そこで、棚卸資産の評価方法について解説する前に、そもそも在庫とは

何かについて、説明しておきたいと思います。


棚卸資産とは、販売する目的で仕入れ、一時的に保有している

原材料や仕掛品、商品、製品、半製品等のことです。


棚卸資産と税金の関係では、在庫を保有しているだけで税金は発生しま

せんが、取得する際には消費税は発生しています。


但し、バランスシートに計上される在庫には消費税は含まれていません。


ちなみに、中小企業が保有する、棚卸資産を担保に銀行より借入を

行う場合に、信用保証協会が融資金額の80%の保証を行う保証制度が

棚卸資産担保融資保証制度です。


棚卸資産の評価方法の実務上注意すべき事の1つとして、

税務署にどの評価方法を選択したかを届出する必要があります。


税務署へ届出をしていなければ、最終仕入原価法を選択したとみなされます。


棚卸資産は、貸借対照表上では、流動資産の部に表示され、この勘定科目は、

仕入高と共に売上原価の算定には欠かせない要素です。


棚卸資産の回転期間は、資金繰りに大きな影響を与える要素で、運転資金を

増減させます。


在庫を管理する際は、在庫投資を計画する際に作成した、予算の棚卸資産の

回転期間と実績の棚卸資産の回転期間を常時チェックすることが必要です。


在庫計画の棚卸資産の回転期間より実際の回転期間が長期化すれば、

それだけ資金繰りを圧迫することになるので、この回転期間の管理は、

資金繰りを管理するうえでも、とても重要な業務プロセスなのです。


ちなみに、棚卸資産回転期間と棚卸資産回転率の計算結果は同じ意味です。


そして、在庫の増加は、運転資金の増加を招き、在庫の保管費用等の

資金コストが増加して資金繰りを圧迫し、企業のキャッシュフローには

マイナスに働きます。


よって、不良資産となっている在庫の処分や棚卸資産の販売サイクルプロセスを

短期化し、適正在庫を実現することは、企業のキャッシュフローを改善させる

効果があります。


在庫管理をする際に、管理会計では、在庫金利という概念を設定することが

あり、プロダクトミックスを決定する際は、棚卸資産回転率を用いて、

交差比率を算出します。


また、粉飾決算の手法としては、在庫を操作をすることが一般的です。


棚卸資産の金額を操作して財務諸表を良く見せても、回転期間分析等で在庫

の金額が異常値であることは発見できる為、粉飾決算の際にこの勘定科目の

数値だけを操作しても、粉飾決算はすぐに見破られてしまいます。


棚卸資産の四半期末における時価が簿価を下回っている場合は、

在庫の収益性が低下していると考えられるため、各四半期末毎に、

時価と帳簿価額を比較して、帳簿価額が時価を下回っている場合は、

その差額を棚卸資産評価損として計上し、簿価を切り下げる必要があります。


棚卸は、期末棚卸資産の金額を確定するベースになる数量を確定する作業であり、

この期末在庫数量に原価法や低価法などにより決定した棚卸資産の単価を乗じて、

期末棚卸資産の金額を算出します。


棚卸資産管理規程は、棚卸資産の管理業務を正確に遂行し経営効率の向上に

資する為に定めるべき規定で、棚卸資産管理規程は、株式公開準備の際にも

定めておくべき規定の1つです。


IFRSの棚卸資産の定義は、通常の販売サイクルの過程により保有されている

ものや、販売の為に生産途中のもの、生産の際に消費される原材料等のことです。


よって、IFRSの定義と従来の定義が大きく異なっていることはなく、IFRSの

棚卸資産の評価では、原価と正味実現可能価額のいずれか低い金額による

会計処理方法が強制されています。


■棚卸資産の種類

一般的に、棚卸資産である、原材料、仕掛品、商品、製品等を総称して、

在庫と呼んでおり、在庫は、決算時には棚卸を行い実際の有高を把握する

ことが必要です。


各棚卸資産についての解説は下記の通りです。


・商品

商品とは、企業が営業活動をする為に販売目的で仕入をし保有している

物品を処理する資産の勘定科目です。


仕入れた商品を処理する仕訳方法には、分記法、総記法、三分法があり、

期末に保有している商品は、バランスシート上では、流動資産の部に表示します。


この商品の取得価額には、商品を仕入れた際に発生する引取費用を含める

ことが原則ですが、その引取費用には、直接引取費用と間接引取費用があります。


直接引取費用は、必ず取得価額に含めますが、間接引取費用は、税法においては、

商品の仕入価格の3%以内であれば、取得価額に含めないことが出来ると

定められています。


商品に関する重要な財務指標としては、商品回転期間があります。


ちなみに、プロダクトミックスを決定する際は、商品回転率を用いて、

交差比率を算出します。


尚、商品の直接引取費用と間接引取費用の内容としては下記の通りです。


商品の直接引取費用と間接引取費用の内容

・直接引取費用は、引取運賃、運送保険料、荷役費、購入手数料、関税などで
構成されている。

・間接引取費用は、買入事務費用、検収費用、整理費用、選別費用、手入費用
などで構成されている。


また、商品は、期末に棚卸を実施して、在庫の数量を確定しますが、

帳簿上の数量より実際の在庫数量が少ない場合は、棚卸減耗損として

処理します。


・製品

製品とは、工場にて原材料を加工して製造した物品のことを示す流動資産に

計上される勘定科目です。


製品の原価は、直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費で

構成されており、期末に保有する在庫の評価方法には、原価法と低価法が

あります。


製品原価を算定する際には、副産物等の処理方法と歩留率をどのように

考えるのかは、重要な要素の1つです。


製品は、決算時には棚卸を行い製品有高を把握することが必要で、

バランスシート上では、流動資産の部に表示されます。


この製品を製造する為には、工場などの設備、材料費、労務費、経費などが

必要になりますが、これらの費用が多くなれば、結果として原価も

上昇してしまいます。


製品に関する重要な財務指標としては、製品回転期間があります。


製品回転期間と製品回転率の計算結果は同じ意味です。


ちなみに、製造予算では、製品の生産量、原材料在庫、仕掛品在庫、製品在庫、

製品製造原価を作成することになり、製造予算を作成することは、製品の

予定原価を設定することです。


また、製品の原価を抑える為には、固定費の増加となる設備投資は、

必要最小限にすべきであり、製造期間が長期化すれば、人件費や経費も比例

して増加するので、製造期間も可能な限り短縮することが、製品原価を下げる

ことに繋がります。


製品と商品は、会計上は明確に区別されています。


しかし、商品とは、営業活動の為に売る為の物品であるはずなので、

商品は、外部から仕入れた商品と自社で製造した製品で構成されていると

考えることができます。


ゆえに、製品とは、工場にて原材料を加工して製造した物品であるので、

製品は、商品に含まれると考えるのが一般的です。


・仕掛品

仕掛品とは、工場の生産ラインに材料等を投入して製造途中にある

物品を示す資産の勘定科目です。


在庫である仕掛品は、直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費で

構成され、期末に保有する仕掛品の評価方法には、原価法と低価法があります。


仕掛品は、決算時には棚卸を行い仕掛品有高を把握することが必要で、

バランスシート上では、流動資産の部に表示されます。


この仕掛品は、半製品と混同されることが多いのですが、仕掛品と半製品の

違いとしては、半製品は、製品として完成はしていないが、中間製品として

販売することが可能で倉庫などに貯蔵されている状態であり、仕掛品は、外部に

販売する事も倉庫などに貯蔵することもできない物品です。


ちなみに、仕掛品の予算を作成するポイントは現場の効率化とキャッシュフロー

の改善です。


また、仕掛品は、完成品である製品の何パーセントの出来上がり状態で

あるのかを決定する必要がありますので、この勘定科目の評価には、企業の主観が

入ることになり、この出来上がり状態の評価次第で売上原価が変動し利益にも

影響を与えることになります。


ちなみに、仕掛品の出来上がり状態のことを、工業簿記では進捗率と

呼んでいます。


尚、工場の生産ラインに材料等が投入されて製品が完成するまでの期間が

短期間であれば、製品を販売できるようになるまでの時間も短縮され、

在庫として資金が滞留する期間も短くなり、資金繰りにもプラスに

作用しますので、仕掛品回転期間の計算結果が小さければ小さいほど

生産効率が高いと判断できます。


・半製品

半製品とは、工場の生産ラインに材料等を投入して製造途中にあり、

且つ販売することが可能で倉庫などに貯蔵されている状態である物品を

示す流動資産に計上される勘定科目です。


半製品は、直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費で構成されています。


半製品は、決算時には棚卸を行い半製品有高を把握することが必要で、

バランスシート上では、流動資産の部に表示されます。


また、半製品は、完成品である製品の何パーセントの出来上がり状態で

あるのかを決定する必要がありますので、半製品の評価には、企業の主観が

入ることになり、この出来上がり状態の評価次第で売上原価が変動し利益にも

影響を与えることになります。


ちなみに、半製品の出来上がり状態のことを、工業簿記では進捗率と

呼んでいます。


・原材料

原材料とは、製品の製造プロセスで直接消費される原料や材料で未使用の

物品を示す資産の勘定科目です。


在庫である原材料は、決算時には棚卸を行い原材料有高を把握することが必要で、

バランスシート上では、流動資産の部に表示します。


この原材料は、主に製造業で使用される勘定科目で製品を生産する為には

欠かせない物でもある為、原材料の調達ルート確保は、重要な経営課題の

1つです。


また、製造業の企業にとって、原材料が製品原価の大半を占める場合は、

この調達価格次第で製品原価が決定してしまうので、市況の変動により

大きく価格が変動する原材料については、長期購入契約を結ぶ等して、

価格のヘッジをする必要があります。


尚、原材料を仕入れてから、使用する迄の期間を示した指標が

原材料回転期間です。


一般的に、原材料回転期間が短ければ生産が効率的であると判断できますが、

逆に、原材料回転期間が長すぎる場合は、過剰在庫の恐れもありますし、

原材料回転期間が長すぎる場合は、当然、製品の完成も遅れ、資金繰りを

圧迫する要因になります。


■棚卸資産の評価方法

棚卸資産の評価方法を大別すると原価法と低価法があります。


・原価法

原価法とは、会計処理方法において取得価額に基づいて資産の評価を

する方法のことです。


原価法として処理していた資産には、商品や製品などの棚卸資産、有価証券、

不動産などがあります。


新会計基準では、棚卸資産の評価方法は、低価法が強制的に適用されます。


また、原価法の場合は、資産の帳簿価額は取得価額と同じなので、

資産の評価に主観が入り込む余地はありませんが、低価法を採用した場合は、

資産の評価をする際に、何を持って期末時価とするのかは問題です。


ちなみに、低価法を適用して、評価損が多額に計上されたら、売上原価が膨らみ、

売上総利益は減少します。


尚、商品、製品、半製品、仕掛品、原材料など在庫の評価方法である

原価法には、下記の8種類の評価方法があります。


・個別法

個別法とは、棚卸資産を個別の取得単価で評価する方法のことです。


個別法は、原価法に基づく棚卸資産の評価方法のひとつです。


・先入先出法(FIFO)

先入先出法(FIFO)とは、古い棚卸資産から先に払い出すと想定して

在庫を評価する方法のことです。


先入先出法は、原価法に基づく棚卸資産の評価方法のひとつであり、

インフレの時期に、先入先出法の評価方法を採用していると、売上原価を低下

させる要因となり、売上総利益を押し上げることになります。


ちなみに、先入先出法は、FIFOと呼ばれることもありますが、

FIFOとは、First In First Outを略したものです。


・後入先出法(LIFO)

後入先出法(LIFO)とは、新しい棚卸資産から先に払い出すと想定して

在庫を評価する方法です。


後入先出法は、原価法に基づく棚卸資産の評価方法のひとつであり、デフレの

時期に、後入先出法の評価方法を採用していると、売上原価を低下させる要因

となり、売上総利益を押し上げることになります。


この後入先出法は、新会計基準では、平成22年4月1日以後開始する

事業年度から、在庫の評価方法に適用することはできなくなり、

後入先出法は、廃止されることになりました。


ちなみに、後入先出法は、LIFOと呼ばれることもありますが、

LIFOとは、Last In First Outを略したものです。


・総平均法

総平均法とは、期首棚卸資産と期中取得の棚卸資産の平均単価で

棚卸資産を評価する方法のことです。


総平均法は、事業年度が終了しないと棚卸資産の評価単価が確定しない評価方法

であり、総平均法と移動平均法の違いは、総平均法は、仕入の度に、その都度

平均する計算をしない点です。


この総平均法の、法人税法における原則的な計算方法は、年次基準であり、

年次基準とは、期首棚卸資産と期中取得の棚卸資産の平均単価で棚卸資産を

評価する方法であり、法人税法では、1ヶ月ごとに総平均法により計算する

月次基準も認められています。


また、総平均法は、棚卸資産の取得単価が平均化されるので、市況によって

変動が激しい原材料の評価には適しているといえ、総平均法を在庫の

評価方法に採用した場合は、他の評価方法と異なり売上原価や売上総利益に

大きな影響を与えることはありません。


・移動平均法

移動平均法とは、在庫を取得するたびに平均取得単価を算出し棚卸資産を

評価する方法のことです。


移動平均法は、仕入をする度に棚卸資産の平均取得単価が変化する方法であり、

移動平均法と総平均法の違いは、総平均法は、仕入の度に、その都度平均する

計算をしない点です。


この移動平均法の計算方法は、仕入直前の在庫残高数量とその仕入金額に、

今回仕入れた棚卸資産数量とその仕入金額をそれぞれ加えて平均計算をします。


・単純平均法

単純平均法とは、期中取得の棚卸資産の平均単価で在庫を評価する

方法のことです。


単純平均法は、棚卸資産の数量を考慮せずに単価だけで在庫の

評価を行う方法であり、企業会計原則では認められていない評価方法です。


この単純平均法は、法人税法においては棚卸資産の評価方法として

認められていましたが、国際的な会計基準とのコンバージェンスを

図るため、法人税法においても単純平均法は、廃止されることに

なりました。


・最終仕入原価法

最終仕入原価法とは、事業年度の最後に仕入れた単価で棚卸資産を

評価する方法のことです。


最終仕入原価法は、法人税法では在庫の評価方法として認められています

が、企業会計原則では評価方法として認められていません。


この最終仕入原価法を、インフレの時期に、棚卸資産の評価方法として

採用していると、売上原価を低下させる要因となり、売上総利益を

押し上げることになります。


・売価還元法

売価還元法とは、棚卸資産の売価に原価率を乗じて在庫を評価する

方法のことです。


売価還元法は、商品の取り扱い種類が非常に多く、一種類毎の単位原価を

もって期末棚卸資産を評価することが困難な企業が適用する評価方法です。


この売価還元法を採用して、メリットを享受できる業種は、取扱品種の多い

小売業であり、売価還元法は、受払記録を簡略化して管理することができるので、

在庫管理の手間を削減できることが、売価還元法のメリットといえます。


また、売価還元法のデメリットとしては、原価率の算定が困難であることです。


尚、売価還元法には、連続意見書方式(インプット方式)と税法方式

(アウトプット方式)があります。


売価還元法の計算式

(期首棚卸高+期中仕入高)÷(期末棚卸高の売価+当期の売上高総額)=原価率


・低価法

低価法とは、資産の帳簿価額と期末時価を比較して、資産をいずれか

低い価額により評価する方法です。


低価法を適用することで、簿価を期末時価まで引き下げた場合のその差額は

評価損となり、新会計基準では、棚卸資産の評価方法は、低価法が強制的に

適用されます。


この低下法に対する原価法とは、資産の取得価額に基づいて資産の評価を

する方法のことです。


また、低価法による評価損は、現金の流出を伴う費用ではないので、

キャシュッフローには中立要因となります。


そして、原価法の場合は、資産の帳簿価額は取得価額と同じなので、

資産の評価に主観が入り込む余地はありませんが、低価法を採用した場合は、

資産の評価をする際に、何を持って期末時価とするのかは問題です。


ちなみに、棚卸資産に低価法を適用して、評価損が多額に計上されたら、

売上原価が膨らみ、売上総利益は減少します。