総務に向いている人、総務に不向きな人


中小企業にも、組織に総務部が設置されていることが多いのですが、

総務に向いている人、総務に不向きな人とはどんな人でしょうか?


総務は会社の何でも屋さんと呼ばれる位、総務部の業務範囲は広範囲に

わたるのですが、企業の総務の役割として、どんな業務があるのかは

意外に知られていないのではないでしょうか。


総務の全ての業務範囲を少人数でカバーすることは現実的に難しい

でしょうから、企業においては、総務の重要な業務に関しては、全て対応

できることが求められています。


総務は会社の何でも屋さんと呼ばれてはいますが、幅広い専門知識がなければ、

誰もが総務部の業務を遂行できるわけではないのです。


間違っても、総務の仕事は、誰にでもできるほど簡単な仕事ではないことを

認識する必要があります。


ところで、中小企業では、大企業と異なり、法務部という組織が設置

されていないことが多いので、法律に関する業務は、全て総務部が担当

しているケースが多いようです。


しかし、中小企業の総務部が、法務に関してどこまで対応できているのかは

甚だ疑問です。


例えば、次の様なケースが会社内で発生した場合に、総務部の対応としては

どのようなことが考えられるでしょうか?


A会社において、取引先のB会社に対して100万円の仕入代金の未払い

(買掛金)があったとします。


この取引先であるB会社は、仕事の内容が悪いという理由で、

A会社の社長の怒りを買い、引き渡しが終わって支払期日から3ヶ月が経過

しているのに仕入代金の支払を受けていません。


A会社の社長は、B会社に反省してもらうために、支払を引き延ばして

いるのです。


ちなみに、A会社は、C銀行から1億円の融資を受けており、A会社の利益は

年間1千万円位で、現状、A会社の資金繰りはあまりよくない状況ですが、

100万円の仕入代金を支払うくらいの余裕はあります。


このような場合、総務担当者が、A会社の社長にアドバイスできること

としては、どんなことがあるでしょうか?


おそらく、皆さんがすぐに頭に浮かぶ問題としては、親事業者が、

一定期間内に下請代金を全額支払わない場合は、下請法違反となる

ということではないでしょうか?


確かに、下請法に関することも問題には違いませんが、もっと大きな問題

が起きる可能性が隠れています。


総務の担当者は、これから説明する法律に関することを知っていなければ、

総務の仕事に携わる者としては失格といえるでしょう。


まず、先ほどの事例の中に、A会社は、C銀行から1億円の融資を受けている

との条件がありましたが、一般的な、融資契約の内容には、期限の利益

に関する条項が含まれています。


この期限の利益とは、債務者であるA会社がC銀行に対して持っている権利

のことです。


銀行からお金を借りている人や企業には、期限の利益が認められている

のですが、この期限の利益とは、融資の返済期限までは借入金を返済

しなくてもよいという権利です。


しかし、期限の利益は、一定の事態が発生すると、その期限の利益を享受

する権利が失われてしまうのです。


仮に、債務者が、期限の利益を失ってしまうと、債務者は、銀行から、

借りているお金を一括で返済を迫られる場合があるのです。


期限の利益を失う理由としては、先ほどまでの事例を例にすると、

A会社が保有する債権に、裁判所から仮差押え・保全差し押さえ・差押えの命令

や支払の督促通知等がされた時なのです。


仮に、B会社が、資金繰りに困っており、今月の手形を落とすための

資金が全く確保できていなければ、B会社は、どのような行動を取る

でしょうか?


当然、B会社は、どんな手段を用いても、A会社に対する債権を含めた、

未回収の債権回収に動くと考えるのは、自然なことといえるでしょう。


そのような時に、B会社が、裁判所に対して、支払督促の申立書を提出し、

裁判所がその内容を認めて支払督促を発付したらどうなるでしょう?


当然、裁判所が、A会社に対して、支払督促書を通知したら、A会社が、

期限の利益を失う理由が発生することになり、そのことをC銀行が知ったら、

間違いなくC銀行は、A会社に対して、借りているお金を一括で返済する

ように要求してくるはずです。


そのような事態に陥った時に、資金繰りの状態が悪いA企業に、

耐えることができるでしょうか?


A会社からすると、自分の立場を利用したB会社に対する強硬的な行動が、

結果として自分の首を絞めることになるのです。


しかし、A会社が、B会社に対して、仕入代金を支払わないという強硬的

な手段を取ろうとした時に、B会社の取り得る行動を、A会社の社長に法的

なアドバイスすることができる総務の社員が居れば、そのような危険な事態

を招くことはないでしょう。


ここまでの解説をお読み頂ければ、中小企業において、総務を担当している

人間は、ビジネスの現場においてよく問題となるこのような法律知識も

持ち合わせていなければ、総務部の役割を果たすことができないといえる

ことがご理解頂けることと思います。


要するに、中小企業において、総務の仕事を遂行する為には、経理には、

簿記や会計の知識が必須であるように、総務には、法律知識は必須と

いえるのです。


このように、総務に向いている人は、法律の知識を持っている人で、

総務に不向きな人は、法律の知識を持っていない人であるといえるでしょう。