創業融資審査のポイント


■創業融資とは

創業融資とは、設立直後で売上実績がなく、これから事業をはじめる起業家が、

融資を受けることができる制度です。


この公的融資には、日本政策金融公庫と信用保証協会の2種類があります。


この融資制度における日本政策金融公庫の融資限度額は3000万円で、

信用保証協会の融資限度額は2500万円です。


基本的に、日本政策金融公庫と信用保証協会の創業融資審査のポイントは

同じですが、審査における各項目のウエイトはかなり異なります。


このような理由から、日本政策金融公庫に融資を申し込んで審査に通らなくても、

信用保証協会に融資を申し込んで審査に通るケースはあるので、日本政策金融公庫に

融資を断られても、信用保証協会に融資を申し込むべきです。


日本政策金融公庫と信用保証協会の融資審査のポイントは下記の通りです。


日本政策金融公庫と信用保証協会の創業融資審査のポイント

①自己資金
②起業家の事業経験と経営者としての資質
③事業の成功可能性
④お金の使い道


公的融資審査を通過するためには、上記の4つのポイントを、

どのように表現するかが問われるのです。


次に、融資審査のプロセスで重要なポイントをあげると、

事業計画書作成と融資審査面談です。


事業計画の内容だけなら、プロに依頼すれば申し分のない事業計画書を

用意できるでしょう。


しかし、融資審査面談だけは、自分自身で対応しなくてはなりませんから、

何を質問され、どのように返答するべきかが理解できていなければ、

融資の最終段階で失敗することになるのです。


ゆえに、いくら事業計画の作成を丸投げしたとしても自分が経営者なのですから、

事業についての質問をされて、返答できないようでは、貸す側も不安になって、

融資を実行してくれないでしょう。


それでは、各項目のポイントについて順次解説していきます。


■自己資金

自己資金は、創業融資を受ける際の前提条件ともいえ、どれくらい融資を受ける

ことができるかも、自己資金の金額次第です。


ここで論点にしている自己資金の金額と資本金の金額は全く別物です。


自己資金というと、資本金のことと勝手に思い込んで勘違いしてしまい、

自己資金に対する対策が全くされずに融資審査に落ちる起業家が

非常に多いのです。


日本政策金融公庫では、自己資金の具体的な要件が示されていますが、

信用保証協会では、自己資金の具体的な要件が示されていません。


しかし、信用保証協会の融資審査においても、自己資金が多ければ多いほど、

受けられる融資金額も多くなることはいうまでもありません。


自己資金というと、お金をたくさん用意できれば充分だろうと大半の人が

考えますが、公的融資審査の場合は、そんなに単純ではありません。


この自己資金の審査には、質と量の両面から審査がありますので、

実際に起業前から対策を立てて準備しておかなければ、自己資金に対する審査で

マイナスポイントとなってしまいます。


また、日本政策金融公庫の場合は、創業に必要な資金の10分の1以上を自己資金

として準備しなければなりませんので、おのずと融資を受けることが可能な限度額

も決まってきます。


■起業家の事業経験・経営者としての資質

起業経営に限らず、全く知識もなく未経験のことをはじめるよりも、

知識があり経験もあることをはじめるほうが、うまくできる可能性が高い

でしょうし、第三者もそのように思うはずです。


そうすると、公的融資審査のポイントの中にも、起業家が、これからはじめる

事業の経験の有無やその事業に対する知識がどれくらいあるか、更に、経営者

としての資質はどうなのかを評価することはごく当たり前なことといえます。


要するに、創業融資審査では、起業家が、開業するビジネスを展開するうえで

必要な知識、ノウハウ、技術をどのようにして身につけたのかを過去の経歴から

評価するのです。


この融資審査においては、客観的に、起業家の事業の成功可能性を判定する

方法としては、起業家が、過去にどのような事業経験を積んで、どのような成果

をあげたのかを評価するしかないからです。


ちなみに、起業家の事業経験に関して融資審査で問われるのは、

過去に何らかの事業経験があるかどうかなので、これからはじめる事業と

同じ業種の事業経験の有無だけで判断されることはありません。


そして、自らが経営者としての経験があれば最も好ましいといえますが、

これからはじめる事業と同種での職務経験があるかどうかも重要視されます。


そうすると、公的融資審査においては、これまでの勤務先毎に経験した、

具体的な職務内容や具体的な実績成果についてアピールする必要があるわけです。


例えば、これからはじめる事業が小売店の場合、同種での職務経験がなくても、

接客経験、在庫管理、お金の管理、店舗の管理などの職務経験は、異業種で

あっても、これからの事業に役立つ経験となります。


よって、自分のこれまでの職務経験を棚卸して、融資審査において

アピールできる経歴を記載する必要があります。


ところで、起業家の事業経験は、過去にどのような事業経験があるのかで判断

されることになりますが、起業家の経営者としての資質はどのようにところで

判断されるのでしょうか?


それは、創業融資審査のポイントでもある、①自己資金、②起業家の事業経験、

③事業計画の内容、④融資審査面談で総合的に評価されることになります。


特に、審査面談では、審査担当者が見て経営者として可能性を感じさせる

ような受け答えと、審査担当者が、「なるほど」と思うような、儲ける仕組みを

話すことができるかどうかが、一番のポイントになるでしょう。


■事業の成功可能性

お金を貸す側からすれば、どんなに自己資金が多く、過去に素晴らしい事業経験を

持っていたとしても、起業家が、これからはじめようとする事業の成功可能性が高い

と思わなければ、お金を貸してくれることはないでしょう。


例えば、会社の強みを説明する時に、「質の高い商品を安く提供できる」、

「何度でも来店してもらえる美味しい料理を提供する」、「他社では真似ができない

技術がある」などとだけ説明されても、融資審査担当者は、「すごい」、

「必ず成功しそうだ」、「これならうまくいく」などと思ってくれるでしょうか?


間違いなく、そのようなことを一言説明しただけでは、誰も、事業の成功可能性が

高いと思ってくれることはないでしょう。


要するに、事業の成功可能性を判断するポイントは、売上が上がる根拠が

あるのかどうかを見極めることにつきます。


ビジネスは、売り上げがつくれなければ成り立ちません。


そうすると、融資審査担当者が、起業家の事業計画を見る時に最も重要視

しているのは、本当に売り上げがつくれる計画になっているかどうかに

尽きるのです。


起業の失敗の最大の原因は、期待したような売上高がつくれないことですし、

経営者が最も苦労することは、どうやって売上をあげるかということなのです。


ビジネスをするうえでは、必ず競争相手が存在していますから、その競争相手と

どのように戦って、どうやって顧客に受け入れて貰うのかを計画したものが、

売上をつくる仕組みです。


ゆえに、売上をつくる仕組みでもある、マーケティングの観点から、

自社が売上をつくることができる根拠を説明することが最も重要に

なってくるわけです。


このような、売上をつくる仕組みを具体的に説明できることが、

経営者としての資質に対する評価にも繋がってきます。


この売上をつくる仕組みが完成すれば、後は、売上・費用・利益のバランスを

注意して、借入金を返済できる計画に纏めるだけなのです。


このように、事業の成功可能性が高いと判断して貰うためには、

いかに、売上をつくる仕組みを具体的に説明できるかにかかっている

といっても過言ではありません。


ちなみに、公的融資審査のポイントを知ることは、銀行が融資を断る理由を

知ることにもなるといえます。


■お金の使い道

公的融資で借り入れる資金は、設備資金か運転資金に使用されることになりますが、

設備資金として借りる場合と、運転資金として借りる場合はどちらが借りやすい

のでしょうか?


それは、運転資金として融資を申し込むよりも、設備投資資金として融資を

申し込むほうが間違いなく借りやすいです。


その理由は、設備資金が融資の使い道の場合は、融資申請の際には、

どんな設備を購入する予定なのかは、設備の見積書を見れば確認できます。


また、融資の実行後、どんな設備を購入したかは証憑(領収書等)を見れば

明らかなので、お金を貸す側からすると、融資を申請した目的通りに資金を

利用していることが確認できるからです。


ちなみに、融資の審査においては、設備資金以外は全て運転資金とみなされ、

この場合の運転資金には、財務上の運転資金と毎月必要になる販管費等が

含まれます。


また、運転資金として借りる場合は、必ず資金繰り表の作成が必要になりますので、

最低限月別の資金収支表を5年分位は用意する必要があるでしょう。


設備資金目的で融資の申し込むをした場合は、借り入れた資金全額を設備資金の

購入に当てなければなりません。


仮に、設備資金目的で借り入れた資金を、運転資金として使用した場合は、

融資の取り消しという最悪のケースに陥る場合もありますので注意が必要です。


■融資審査面談

いよいよ、融資審査の最終段階の融資審査面談になりますが、どんなに過去の経歴が

よく、事業計画が申し分のない内容だったとしても、実際に審査面談をして、

過去の経歴や事業計画の内容と釣り合わない様な受け答えしかできなければ融資が

成功することはないでしょう。


そして、審査面談では、事業に関する質疑応答だけでなく、自己資金や

資金の使い道等についても質問をされるので、それらの対策も必要でしょう。


審査面談で、質問されることが多い事項や注意事項は下記の通りです。


融資審査面談で、質問されることが多い事項

・どうして、この事業をはじめようと考えたのですか?

・この事業の、事業環境について説明して下さい。

・あなたの事業での強みや競合他社との違いを説明して下さい。

・この事業についての、将来的な展望をお聞かせ下さい?

・もし、事業がうまくいかない場合に、どのように対処しますか?

・これまでに、どのような経歴をお持ちかお聞かせ下さい。

・自己資金を貯める為に、どうやって、どの位の期間要しましたか?

・自己資金を貯めた通帳を見せて下さい。

・購入する予定の設備の見積書を見せて下さい。

・公共料金や税金の滞納はありませんか?

・資金繰り表に記載されている、主要な支払内容について説明して下さい。

・事業をはじめることを決めた時に、周囲の人から反対されましたか?

融資審査面談に関する注意事項

・面談は基本的に経営者1人で対応することになります。

・面談の際の融資審査担当者も基本的に1人です。

・面談の日時は、基本的に融資申請をした日から1週間前後で行われます。

・面談の時間は、およそ1時間位です。

・融資が通らかった場合の理由は、教えてくれません。

・面談の際は、通帳の原本も持参する方が無難です。

・面談の際は、見積書の原本も持参する方が無難です。

・面談では、創業計画書などの再提出を求められる場合があります。


■現地調査

融資審査面談の後は、実際の事業の活動状況を確認する為に事務所や店舗を

訪問しての現地調査があります。


この現地調査は、事業に実態があるかどうかを確認するプロセスなので、

基本的に現地調査は必ずあると思っていた方がよいのですが、稀に、現地調査が

ないケースもあります。


現地調査で、確認される事項や現地調査に関する注意事項は下記の通りです。


現地調査で、確認される事項

・予定通りの場所に事務所や店舗があるかを確認すること。

・事務所の場合は、机、椅子、電話などが揃っていること。

・店舗の場合は、開業の準備が進んでいること。


現地調査に関する注意事項

・基本的に、現地調査は、面談が終わってから1週間前後で行われます。

・基本的に、現地調査の回数は1回です。

・基本的に、現地調査に来る審査担当者は1人です。

・基本的に、現地調査が終わってから、1週間前後位で融資の可否についての
連絡があります。


■融資が通らないケースや融資が大幅に減額される場合

創業融資が通らないケースや融資が大幅に減額される代表的な具体的事例としては

下記の様なケースがあります。


・本店所在地となる住所が、登記だけをしている実態の無いバーチャルオフィスや
直ぐに解約可能なレンタルオフィスである場合。

・住宅ローン・クレジットカード・カードローン等の事故情報があったり、
電気・ガス・水道など公共料金や住民税などの税金滞納が過去にある場合や、
自己破産をしたことがある場合。

・自己資金が全くない場合や、自己資金がほとんどない場合。

・起業家に経営者としての事業経験がない場合や、サラリーマンとしての職務経験
もない場合

・すでに日本政策金融公庫か信用保証協会のどちらかから融資を受けている場合。

・売上が上がる根拠の説明が具体的にできない場合。

・設備資金の借入であるにも関わらず、設備の見積書を呈示できない場合。

・運転資金の借入であるにも関わらず、資金繰り表の作成を準備していない場合。

・融資審査面談で、融資審査担当者からの質問に、的確に返答できない場合。

・別な仕事をしながら、新たに事業をはじめようとする場合。


■その他

公的融資を申し込む為の条件や融資審査の際に注意しておくべき代表的な

具体的事例としては下記の様なケースがあります。


・会社の設立登記が完了するまでは、融資の申し込みはできない。

・事業に必要な許認可を受けた後でないと、融資の申し込みはできない。

・提出する創業計画書は、指定のもの使用し、できるだけ手書きをして、
必ず記載項目は全て埋める。

・事業計画の内容に補足すべき資料は、分かりやすく簡潔に纏める。

・会計事務所等から、日本政策金融公庫への紹介状を発行してもらっても、
融資審査には何ら影響しない。

・日本政策金融公庫の融資申込は、事業開始後税務申告が2期終了前なら可能。


■最後に

公的融資に関する情報収集を、インターネットでされる方は非常に多いと思いますが、

ネットでは、嘘の情報や、誤った情報、古すぎる情報が氾濫しており、それらの情報を

見て自己判断することは、失敗への道を自ら選択したようなものです。


やはり、公的融資に関しては、その道の専門家に相談するのが確実です。


なお、創業融資でお悩みのことがございましたら、当事務所の無料相談を

ご利用頂くか、24時間対応の電子メールによるお問い合わせをご利用下さいませ。