資金ショートによる黒字倒産


■資金ショートによる黒字倒産

・資金ショート

資金ショートとは、現金の流入より現金の流出が多くなり、資金が手元に無くなった

状態のことです。


金詰りを起こすと、企業活動がストップしてしまい、利益がでている

のに倒産に至ってしまう、黒字倒産につながる可能性が高くなります。


そのために、資金ショートを防ぐためにも資金繰り表を作成し、資金繰り

常にチェックすることは欠かせません。


資金ショートすると、デフォルト状態になります。


また、債務不履行に陥る状態は、損益計算書上の問題ではなく、キャッシュフロー上の

問題であるために、この状態が発生する時は、資金繰りが破綻して資金ショートを

起こした時です。


資金難は、突然起こるものではなく、必ず起こる前兆はあらゆるところで

発生しています。


そして、金詰まりに繋がる、前兆や兆し、シグナルを早期に把握することは、

企業経営や財務分析をする際は、とても重要なことなのです。


このような、自社の資金ショートの前兆や兆し、シグナルを早期に把握する

為には、財務計画の作成は欠かせません。


また、取引先が金詰りを起す場合は、信用不安に繋がる何らかの兆しが

必ずありますので、その前兆を捉える与信管理活動でもある、企業の与信調査は

外部機関を使わず、社内で情報収集をする仕組を構築するべきです。


そして、資金ショートが起こる原因としては、運転資金の増加による資金繰りの

圧迫があり、運転資金の増加要因としては、回収サイトが長い受取手形の増加や、

支払サイトの短縮、販売予測の誤りによる在庫の急増、無計画な支払手形の乱発

などがあります。


また、資金ショートの様々な前兆や兆し、シグナルを早期に把握するために、

運転資金に影響を与える、棚卸資産の回転期間、売上債権の回収サイト、

仕入債務の支払サイトの計画値と実績値を常にチェックすることが必要

になります。


ちなみに、経営分析にて、資金ショートの可能性等を分析することは、

安全性分析の範疇になります。


安全性分析には、静態的分析と動態的分析と呼ばれる分析手法があります。


静態的分析と呼ばれる、流動比率や当座比率などの財務比率分析や資金運用表分析は、

企業の資金ショートの可能性を把握するには限界がありますが、動態的分析と呼ばれる

資金移動表は、企業の資金不足の可能性を的確に把握することが出来ます。


・黒字倒産

黒字倒産とは、損益計算書上で利益が出ているのに倒産してしまうことです。


黒字の倒産という現象は、現金の流入より現金の流出が多くなり、

現金が手元に無くなった資金ショートを起こした状態の時に発生します。


黒字の倒産を防ぐために各種の資金表を作成し、資金繰りの状態を常にチェックする

ことは欠かせません。


また、黒字倒産は、突然起こるものではなく、必ず起こる前兆や予兆はあらゆる

ところで発生しています。


黒字の倒産を避ける為には、場合によっては、支払手形の期日を延ばす

手形ジャンプが必要になることもあります。


この黒字倒産が起こる最も多い原因としては、売上代金の回収と仕入代金の支払との

ずれである、運転資金の増加による資金繰り圧迫です。


その他の黒字の倒産事例としては、積極的な設備投資による借入金返済に

売上高と利益が追いつかないケースや、金融市場に信用不安が発生し、

銀行などの金融機関が貸し渋りをするケースなどがあります。


このような、黒字の倒産前兆や兆し、シグナルを早期に把握することは、

企業経営や財務分析をする際は、とても重要なことなのです。


また、取引先企業に信用不安がでているようなケースでは、例えその取引先が

巨額な利益を計上していても、銀行の融資が途絶えれば黒字倒産の可能性は

どんな企業にもありえますので、取引先企業の信用情報は、定期的に情報収集

する仕組を作り上げる必要があります。


そして、黒字倒産を防ぐ為には、運転資金に影響を与える、棚卸資産の回転期間、

売上債権の回収サイト、仕入債務の支払サイトの計画値と実績値を常にチェック

することが重要になります。


ちなみに、手形ジャンプとは、振出した手形の支払期日の延期を相手に要請し、

手形の支払いを延期することです。


手形ジャンプ方法は、相手に手形を返却してもらい、支払い期日延長分の金利相当額等

を上乗せして新たな手形を振出すか、手形の支払期日を訂正変更する方法があります。


手形ジャンプは手形の書換ともいいます。


この手形ジャンプを依頼する側は、資金繰りの状態が悪く支払能力が低下しています。


よって、手形の書換を依頼された側は、その取引先が営業政策上必要な企業であるか

や自社の財務状態を考慮して、依頼を受けるかどうかを判断するべきです。


赤字企業だけでなく、黒字の企業も、黒字倒産を避ける為に手形ジャンプを

利用する場合があります。


また、手形の書換を依頼する側は、手形期日直前に手形ジャンプを依頼しても、

事務的な問題等で不可能になるケースも考慮しておくべきです。


そして、信用不安がある企業が、保有する受取手形の手形ジャンプを依頼してきた

場合は、安易に支払期日の延期に応じることは避けるべきです。


少なくとも、その取引先の財務諸表を最低3事業年度分の提出を求め、その取引先の

財務体質を把握したり、他の取引先の動向調査をして、取引先に担保を要求したり、

次回の支払期日を延期された場合の遅延損害金を決定することも検討すべきでしょう。


仮に、手形ジャンプの依頼をした企業がどの企業からも支払期日の延期を

受け入れて貰えなければ、その取引先が不渡りを起こす可能性は当然高くなります。


もし、その取引先が6ヶ月以内に2度、手形や小切手の不渡りを出せば、

その取引先は、銀行取引停止の処分になります。


企業がこの処分を受けた場合、2年間、金融機関と当座預金取引や融資を受けること

が出来なくなりますので、企業の決済機能が停止し、企業の信用も失墜するため、

事実上の倒産となります。


このように、不渡手形を発生させる、不渡りを出すことは、企業にとって最悪の事態

であるため、資金繰りの際は、特に手形の支払期日は注意する必要があります。


なお、手形ジャンプを行う際には、事務処理に注意すべきことは当然ですが、

まれに、最初に振り出した支払手形と新たに振り出した支払手形が、口座から二重に

引き落とされるミスがあるため、当初に振り出した支払手形は確実に回収する必要

があります。


・債務不履行

債務不履行とは、債務者が債権者に対して契約などに基づき発生した

債務を履行しない状態のことです。


公社債の元金や金利の支払いの遅延や元金や金利の支払いができなく

なる状態も債務不履行です。


債務不履行は、一般的にデフォルトと呼ばれています。


この債務不履行には、債務の返済が滞った場合と、債務の返済が

完全にできなくなった場合があります。


この債務不履行の状態としては、履行遅滞、履行不能、不完全履行の

3種類があります。


履行遅滞とは、債務返済の期日までに返済がない場合や、返済が遅れている

ような場合です。


履行不能とは、企業が資金繰りに行き詰まり、会社が債務超過の状態になり、

債務の返済が完全にできなくなったような場合です。


不完全履行とは、形式的には、債務の返済はされているが、債務の返済内容が

不十分な場合です。


また、債務者が債務を返済しない場合の対抗措置としては、債務者に対して、

強制執行により、強制的に債務の返済を実現する方法と、債務者の債務不履行を

理由に損害賠償を請求する方法があります。


強制執行とは、裁判所に申立てをすることにより、債務者の財産を強制的に

取り上げて、その財産を処分して債務の弁済に充てる手続きのことです。


尚、格付機関がおこなう格付けは、企業の債務の支払い能力を評価したもので、

一般的に格付けが高い企業ほど債務の返済は確実に行なわれ、格付けが低くなれば

なるほど企業が債務不履行を起こす可能性は高くなります。


・不良債権

不良債権とは、債権者にとって問題がある債務者への債権のことです。


不良債権と呼ばれるようになった債権は、債務者の財務内容等が

著しく悪化して回収困難な債権である場合が多く、不良債権は、

企業の資金繰りを圧迫してバランスシートを悪化させます。


また、不良債権は、企業の資金繰りを圧迫する大きな要因の1つであるので、

不良債権の発生を未然に防ぐ為の与信管理システムの構築が必要です。


与信管理システムが有効に機能していれば、不良債権の発生を

最小限に押さえることができ、不良債権によるバランスシートの悪化を

防ぐことが出来ます。


不良債権を処理する方法としては直接償却と間接償却があります。


この間接償却の方法は、バランスシート上(帳簿上)で不良債権を

処理する方法です。


その他の不良債権を処理する直接償却の方法としては、不良債権を売却

してしまう方法があります。


これは、バランスシートから完全に不良債権を切り離して処理する方法です。


このような不良債権を売却する等して、バランスシートから完全に分離することを

不良債権のオフバランス化といいます。


尚、金融機関は不良債権を下記の4つに分類しています。


①要注意先債権
②破綻懸念先債権
③実質破綻先債権
④破綻先債権


・粉飾決算

粉飾決算とは、財務諸表を実態とは異なる姿に見せることです。


通常、粉飾決算は、実態より利益を過大に見せる為に利用する

企業が多いのですが、稀に、実態より利益を少なく見せる

粉飾決算をする企業もあります。


また、企業が粉飾決算をする理由としては、上場している企業の場合は、

粉飾決算をすることにより、投資家に実態を良く見せることによって、

自社の株価対策に利用したりする場合があります。


そのような行為をすると、上場廃止基準にも抵触する可能性があります。


近年は、監査法人による監査でも粉飾決算が発覚することがないような

巧妙な手口で、飛ばしが行われています。


財務内容を実態より良く見せる粉飾決算をして、銀行等の金融機関から

融資を引き出す目的で利用する場合や、粉飾決算をして利益を圧縮し税金

の納付を少なくする意図で行なわれる場合もあります。


更に、サブプライムローン問題の際に利用されていた粉飾決算は、

資産流動化の手法を悪用し、不良資産をオフバランス処理することで、

脆弱な財務内容を隠す目的でも利用されていました。


粉飾決算の手法としては、売上債権、棚卸資産、経費などの操作をすること

が一般的ですが、これらの項目を操作して財務諸表を良く見せても、

現預金残高まで操作する粉飾決算を行なわなければ、動態的分析と呼ばれる

資金移動表分析をすれば、粉飾決算を見破ることが出来ます。


尚、静態的分析と呼ばれる、流動比率や当座比率などの財務比率分析では、

粉飾決算を見破ることは難しいので、粉飾決算の有無を判別する為には、

資金移動表等のキャッシュフロー分析が欠かせません。


・飛ばし

飛ばしとは、不良資産の損失の表面化を防ぐために、不良資産を

ペーパーカンパニー等に移転させる粉飾の方法のことです。


飛ばしは、1980年代では、証券会社の損失補填の方法として利用されて

いましたが、1990年代の証券不祥事で社会問題となり、証券取引法にて

禁止されている会計処理です。


この飛ばしが利用されていた当初は、決算期が異なる企業間で行われる

ことが一般的でした。


飛ばしが法律で禁止されてからは、様々な手法を駆使して、監査法人による

監査でも粉飾決算が発覚することがないような巧妙な手口で、飛ばしが

行われています。


尚、飛ばしによる巨額損失で破綻した企業には、山一証券や日本債券信用銀行等

がありますが、2011年11月には、オリンパスによる飛ばしが発覚しており、

このよな飛ばし行為は、上場廃止基準にも該当します。


■資金ショートを引き起こす対外要因

・信用不安

信用不安とは、企業が倒産するかもしれないという噂や情報が飛び交うことです。


金融市場でこの不安が広がると、クレッジットクランチ(信用収縮)を引き起こし、

この不安が社会全体に広がると金融市場の暴落や金融機関の破綻などに結びつきやすく

経済を悪化させる要因ともなります。


信用不安は、一般的には、企業の財務体質毀損による経営悪化に関する噂や情報を指す

ことが多く、企業にとっては信用不安説が流れること自体、事業活動に支障をきたすため、

この種の噂に関しては、企業として早急に対策を打つ必要があります。


また、取引先であるクライアントの信用不安には常に目を光らせる必要があり、

それが自社の大口のクライアントであれば尚更です。


そして、与信管理業務においても、取引先企業の信用不安は常にチェック

しておく必要があります。


企業の信用不安情報の入手は、その企業に出入りしたり、その企業の社員と

接触する者であれば、その企業に危険な兆候があるかどうかを判断できる

情報を持っている場合が多いので、そのような人から情報を仕入れて

この不安の有無を判断することが可能なのです。


よって、調査機関に企業の信用調査を依頼せずに、自社の社員で充分信用情報

の収集ができますので、社員には取引先企業の情報は、会社のデータベースに

些細な細かい情報まで登録させて、全社で情報を共有しておくべきです。


また、取引先企業から手形ジャンプ依頼や、債務の支払猶予や分割弁済の

要請を受けることは、その企業に資金繰りで深刻な問題があることを端的に

示している為、資金ショートの可能性も高い為、即座に対策を打つ必要が

あります。


そして、一企業だけの信用不安と異なり、金融市場全体に信用不安が

広がると、クレッジットクランチを引き起こしてしまいます。


サブプライムローン問題を発端とする金融危機の際は、銀行などの金融機関

が企業に対して貸し渋りをすることで、資金ショートを起し黒字倒産する

不動産業セクターの上場企業も続出し、銀行間の資金の流れまで滞ってしまい、

金融市場も暴落して、100年に一度と言われるほどの金融危機に発展しました。


・風評リスク

風評リスクとは、誹謗中傷や信用不安などの事実ではない情報が広まる

ことにより、業績や企業価値に大きなマイナスの影響が生じる等の事態が

発生することです。


このリスクへの対策は、企業のリスクマネジメントの観点からも

非常に重要なことです。


このリスクが高まると、一企業の問題から、業界全体や経済全体に

波及する、大きなマイナスの影響が発生する場合があります。


風評リスクが経済全体に波及した例としては、2008年のサブプライムローン

問題を発端とする金融危機があります。


また、近年は、インターネットに意図的に流される、誹謗中傷や信用不安

などの風説の流布が非常に多くなっているので、ネットでの風評リスクに、

どのように対応するかは、全ての企業にとっての共通の問題といえます。


このリスクの対策としては、トラブルを未然に防止する為のリスクマネジメントと、

トラブル発生時の緊急対策である、クライシスマネジメントに分類することが出来ます。


ちなみに、風評被害とは、根拠のない噂話や、ありもしない情報に尾ひれが

ついて誇張されたことによる被害・損害のことです。


風評被害は、情報が不足した時に起こりやすいもので、風評被害の対策としては、

徹底した情報公開が必要でしょう。


この風評被害の身近な例としては、ネットでの風評被害がありますが、

ネットでの風評被害は、どんな企業にも起こりえますので、自社の誹謗中傷

なとが、ネットに広まっていないかを常に監視をする必要があるでしょう。


社会的に、地域的な風評被害を最小限に抑えるという意味では、テレビや新聞などの

報道機関が、事故の報道をする際は、事故のあった地域の県・市・町などの地名を

出来るだけ使用せず、可能な限り、事故のあった狭いエリアの地名を使い報道すること

で、本来は直接関係が無い地域の人達が損害を受けることが少なくなるはずです。


・貸倒リスク

貸倒リスクとは、与信を与えている信用供与先の経営状態や財務内容悪化等により、

取引相手の資産価値が劣化・減少し資金を回収できなくなる可能性のことです。


このリスクは、債務不履行のリスクや信用リスクでもあります。


このリスクを最小限に抑えるために欠かせない業務が与信管理です。


与信管理とは、与信調査をして取引をして良い会社と取引をすると危険な

会社を選別し、取引先毎に信用を供与して、販売代金(売上債権)の回収

の確実性を高め、売掛金回収遅延を防止することです。


また、貸倒リスクを低下させることができれば、不良債権の新規発生を減らし、

資金繰りを改善させる効果もあります。


尚、貸倒リスクに繋がりかねないのが、信用不安であり、信用不安とは、

企業が倒産するかもしれないという噂や情報が飛び交うことです。