内部留保とキャッシュフローの違い


簿記や会計に縁遠い人にとっては、売掛金と未収入金の違いや、

内部留保とキャッシュフローの違いを聞かれても、全く違いが説明できなく

ても当然と言えば当然です。


しかし、経理に携わらない人にとっても、簿記や会計の初歩的な知識がないと、

日常生活においても正しい判断ができない場合があります。


その代表例が、皆さんにも馴染みがある選挙の時です。


一見、簿記や会計の知識と選挙は、全く関連がないように見えますが、

実はそうではないのです。


大多数の皆さんは、これから説明するような選挙演説の内容を、

一度は目にしたり耳にしたことがあるのではないかと思います。


その選挙演説の内容とは、「大企業は、内部留保が1年間で数兆円以上も

増えているので、労働者の賃上げ余力がある」、「大企業は、何百兆円も

内部留保があるので、その内部留保に課税すれば消費税は不要になる」、

「大企業の巨額の内部留保を充てれば多くの雇用が確保できる」というような

ことです。


このような頓珍漢な内容は、幾つかの政党がお決まりの宣伝文句のように

選挙のたびに同じような発言をしています。


簿記や会計の知識がある人が、このような発言を聞いたりすると、無茶苦茶な

意見であると思う方が大半であると思いますが、簿記や会計の知識がない人が、

このような発言を聞くと、真に受けてしまう人も当然いるわけです。


そこで、内部留保について簡単に説明したいと思いますが、内部留保とは、

1年間に会社の手許に残る利益を指す場合と、過去から現在にかけて企業に

蓄積された利益の合計を指す場合があります。


簿記や会計の知識が無い方が、内部留保が、1年間に会社の手許に残る利益

を指すということを聞くと、キャッシュフローも1年間の現金収支のこと

なので、内部留保とキャッシュフローに違いはないと思われる方が多い

ようです。


ここで、押さえておかなければならないことは、企業において、

簿記や会計における利益が計上できたとしても、企業の手許に、その利益の

金額だけ現金が増えるわけではないということです。


企業は、事業を継続していく中で、現金取引をするケースは通常ほとんどなく、

大半は、後で代金を回収したり、後で支払をしたりしているので、利益の金額

と現金の増加金額が一致しないのです。


このことを違う視点から説明するるために、A企業の売上が100円で、

商品の仕入が50円というケースを例にします。


この場合のA企業の利益は、売上100円から商品の仕入50円を差し引いて

50円になります。


このA企業のケースの場合、売上と同時に現金を100円もらって、

商品の仕入と同時に現金を50円支払っていれば、手許に50円が残ること

になります。


そうすると、このA企業のケースは、内部留保の金額とキャッシュフロー

の金額が同じ50円になります。


しかし、A企業が、商品を売る時に、100円は半年後に払ってもらう約束で

販売し、商品の仕入代金も、半年後に支払う約束で仕入をした場合は、

手許のお金が1円も増えないことになりますが、利益が50円であること

には変化はありません。


このように、一般的な企業では、ほとんどが、後で現金を回収したり、

後で現金を支払ったりする掛け取引をしているので、利益の金額と現金の

増加金額が一致しないのです。


ゆえに、この点が、内部留保とキャッシュフローの違いに繋がるわけです。


また、内部留保の金額が幾ら多かったとしても、その内部留保の金額は、

全て現金という資産になっているのではなく、売掛金、受取手形、在庫、

土地、建物、工具器具備品、車両、機械装置などの、直ぐに換金化できない

資産に分散されています。


要するに、企業にとって、内部留保の金額が全て余裕資産ではないのです。


また、企業は、利益に対する税金は毎年支払っていますので、税金を支払った

後の資産である内部留保に対して課税することは、二重課税と呼ばれる税制

の矛盾にもなりかねません。


このように、基本的な簿記や会計の知識があれば、政治家が人気取りのために

矛盾する発言をしたとしても、惑わされることもなく適切な判断をすること

ができますので、資格を取る目的ではなくても、簿記や会計を学ぶ価値は

あるといえるでしょう。