無借金経営のメリットとデメリット


たいていの経営者の方や、経理部の担当者・財務部の担当者が口を揃えて申し合わせ

たように言うことがあります。


その1つが、「無借金経営が理想の経営状態」ということです。


この「無借金経営」というキーワードは、経営者や経理・財務担当者にとって、

ある種、水戸黄門の印籠のような、無条件で受け入れさせてしまう力を

持っています。


それほど、無借金経営に対する憧れや、無借金経営は、経営基盤が

安定した企業の代名詞、強い財務体質とは無借金経営、などの認識を

持っている方が多いことの裏返しでしょう。


しかし、会社の舵取りをする経営者や会社の金庫番である経理・財務担当者

たる者、例え「無借金経営」というキーワードでさえも、盲目的に

受け入れてはいけません。


盲目的に受け入れるということは、思考停止状態なので、

「無借金経営」というキーワードに限らず、一般的に常識と考えられている

ことも、時には疑ってみることも必要ではないでしょうか。


ところで、無借金経営とは、銀行などからの借入れによる間接金融や、

資本市場からの社債・CP(コマーシャル・ペーパー)などの直接金融

による資金調達を全く活用しない経営のことです。


当然、間接金融や直接金融を活用していなければ、有利子負債のコストが

一切発生することはありませんし、借金の返済で資金繰りが圧迫される

こともありませんので経営が安定化することも、代表的な無借金経営の

メリットといえます。


また、無借金経営は、経営者や経理・財務担当者の気持ちを楽にさせる

効果があることも無借金経営のメリットといえるかもしれません。


そして、無借金経営の企業は、外部の第三者からは、健全で取引をしても

大丈夫な企業という評価を受けることも無借金経営のメリットといえる

でしょう。


更に、有利子負債を活用していなければ、必然的に総資産が小さくなるので、

総資産利益率(ROA)も高くなる傾向であることも無借金経営のメリットと

いえます。


逆に、無借金経営のデメリットとして考えられる代表例は、銀行から融資

を受けて借金返済をしている実績がないか、銀行から融資を受けて借金返済

をした実績が遠い過去の為に、資金繰りに困った際に、銀行から直ぐに

融資をしてもらうことが難しいことです。


もう一つ無借金経営のデメリットをあげると、有利子負債という

財務レバレッジを活用していないので、株主資本利益率(ROE)が低くなる

傾向があることです。


しかし、これらのデメリット以外に、意外に知られていない

無借金経営のデメリットがあります。


それは、銀行を、営業活動に利用できていないことです。


この理由を、法人向けビジネスを展開している企業を例にして

解説したいと思います。


一般的に、法人営業は新規開拓が難しいと言われていますが、

その理由の1つとして、ターゲットとしている企業との商談に辿り着く

までが、なかなか困難であることがあります。


法人向けビジネスを展開している企業は、商談をすることができなければ、

契約をとることはできませんから、ターゲットとする企業と商談をする

ために、ダイレクトメール、電話営業、メール営業、FAX営業、

飛込み営業などの様々なアプローチ手段を講じています。


しかし、法人営業においては、一般的なアプローチ手段を講じても、

実際に商談に進む確率は非常に低いのです。


皆さんも、ご経験があるでしょうが、企業は、営業電話やアポなしの

飛び込み訪問に対しては、門前払いにすることがほとんどでしょうし、


また、ダイレクトメール、電子メール、FAXなどを利用した広告が、

決裁権限のある人の目に触れる確率も非常に低いのです。


そのような時に利用したいアプローチの方法が、銀行に、企業を紹介

してもらう方法です。


特に、紹介を依頼する銀行とターゲットとする企業間で取引関係があれば、

銀行に企業を紹介してもらえる確率は高くなることは間違いありません。


いままで、どのようなアプローチの手段を講じても商談に辿り着け

なかった企業でも、この方法を利用すれば商談ができる可能性が

高くなるのです。


しかも、ただ商談ができるだけではなく、決裁権限を持つ役職者と

面談できる可能性もありますので、商談が一気に纏まる可能性すら

あるのです。


ただし、銀行もタダで動いてくれるほどボランティア精神を

持ち合わせていることはありません。


やはり、優良企業で、尚且つ借入をしてくれる企業からの頼みで

あれば労を厭わないでしょうから、借入に要する金利は、売上を増やす

ための必要経費と割り切れば安いものでしょう。


ゆえに、通常は、資金繰りに全く問題がなく借入をする必要が無い企業も、

どうしても顧客にしたい企業がある場合は、ここぞという時に、銀行から

借入をすることを利用して、銀行に、その企業を紹介してもらえば

よいのです。


なお、一般的に、借入の取引関係がある銀行からの頼みであれば、

面談を断る企業は滅多にいないことはいうまでもありません。


このように、無借金経営に拘っていると、コストパフォーマンスの

高い営業のアプローチ手法を放棄しているのも同然なので、無借金経営の

メリットとデメリットをよく考えたうえで、無借金経営を目指すべきか

検討すべきでしょう。


ちなみに、実質無借金経営とは、企業の手持ち現預金残高などで構成される

現金同等物が、有利子負債残高より多い状態のことです。