経理部の役割


■経理部の役割とは


経理部の役割とは、経営管理です。


この組織は、企業や経営陣にとって経営参謀であり、企業の現状を客観的な数値

に変換してタイムリーに社長に報告する機能もある部署です。


また、経営陣が的確な経営判断をする為に、見やすく分かりやすい自社の

財務指標データを含めた有益な情報提供をすることも経理部の役割といえます。


この組織の役割である経理の仕事には、当然、正確さは求められますが、

時には、正確さを多少犠牲にしてもスピードが求められる場面もあります。


この組織の役割を果たす為には、常に経営者の視点で業務を遂行する

必要があるでしょう。


ところで、経理部の仕事の中で、会社が求めている、会社の利益に貢献できる

仕事とは何かを、皆さんは、ご存知でしょうか?


その程度のことは、当然、知っているという方は、

財務管理のスキル身についていますか?の頁を御覧頂き、

ご自身の経理としてのスキルをご確認ください。


この組織の役割である、主な具体的業務は下記の通りです。


経理部の主な業務

①会計帳簿記帳

②財務諸表作成(製造業の場合は、原価計算含む)

③税務申告用資料作成

④管理会計資料作成

⑤法定開示書類の作成(有価証券報告書・決算短信・計算書類・事業報告書)

⑥月次決算の作成

⑦財務計画(単年度予算・中期予算)


上記以外の業務では、新規事業の法令適用事前調査も担当する場合がございます。


また、経理の仕事をするうえで、経理部長や経理部スタッフに最低限必要な

スキルとしては、次のようなものがあります。


経理部長や経理部スタッフに最低限必要なスキル

①簿記の知識

②財務会計の知識

③管理会計の知識(総合予算の作成スキル)

④法人税・消費税等の税務知識

⑤経営分析スキル


上記に示してある、この組織の主な業務を担当するだけで済む場合は、

大企業のように、経理部、財務部、経営企画部と役割分担が明確に

分かれている企業にしか当てはまりません。


中小企業のように、会社の数値を扱う部署が経理部しかない場合は、

財務の仕事や経営企画の仕事である業務も、経理部の役割としてやるべき

業務になります。


更に少人数の企業では、経理部は、総務・庶務の役割など、企業に存在する

バックオフィス事務全般を担う部署でもあるのです。


また、この組織は、大企業であろうと中小企業であろうと、企業の活動結果を

数値として記録する会計帳簿を作成している部署なので、会社の数値化された

全データを常に見る立場にもあり、最も企業の財務内容に精通しているべき

部署であるといえます。


このように、本来であれば、財務部の役割である資金繰り(資金管理)や

経営企画部の役割である総合予算の作成も、普段から会計帳簿を見て、

数値管理をしている経理部が役割を担うことが最も妥当であるといえます。


ところで、大半の企業が、この組織の社員に対して期待していることは、

会社の利益に貢献できる仕事をしてもらうことです。


しかし、経理部に所属する人達は、財務会計や税務会計の専門知識を

身につけることに一生懸命な人が多いのが現実です。


この財務会計や税務会計は、企業外部の利害関係者に情報提供をする

ことを目的とする会計なので、経営の意思決定に必要な管理会計とは異なります。


財務会計や税務会計は、企業の利益に直接貢献する会計ではないのです。


大多数の経理部に所属してる人達を企業に例えると、顧客のニーズを無視した、

商品やサービスを提供することが重要だと思っている人が多いといえます。


これが、企業なら、間違いなく倒産する運命が待っているはずです。


このような理由から、企業内では、財務会計や税務会計の専門知識や簿記、

税理士、会計士の資格を持っているだけの人や、財務会計や税務会計の実務

にしか対応できない人は、経営者からの評価が非常に低いのです。


一般的に、会社の経営陣は、月次決算などのルーチン業務しかできない経理部の

社員のことを、皮肉を込めて「記録屋さん」と呼んでいます。


経営者から、このような低評価を受けないためにも、 経理部に所属する社員は、

利益貢献度の高い経営管理業務に力を入れるべきなのです。


また、経営者からの評価が低い業務にしか対応できない方は、経理コスト削減という、

リストラの対象になりかねません。


その実例として、一般的な経理業務しか対応できない経理社員を、一般事務員並み

の処遇とする企業が増えていたり、社内の経理業務をシステム化するなどして、

大幅な経理コスト削減に取り組む企業が増えており、今後、この傾向が加速される

ことは間違いありません。


よって、世の中の景況感に関係なく、ますます、経理の仕事は外注化され、

ルーチン業務しかできない、経理部の社員の給料は、更に、低下傾向となるのです。


ゆえに、会社の規模に関係なく、経営戦略的に非常に重要なポジションである

経理部の社員は、何時でも、企業のあるべき姿を数値で表現し、企業のあるべき姿

の阻害要因がどこにあるかを常に的確に把握して、阻害要因の問題解決策を経営陣に

提案できる経営管理のスキルを身につけるべきなのです。


なお、予算作成の実務経験が無い方は、「はじめての予算作成」の頁を御覧ください。


■経理部の役割と税務知識


経理部で働く社員にとっては、税務の知識は必須とはいえますが、

どの辺のレベルまで税務の知識が必要になるのかは、会社によって

大きく異なってきます。


例えば、大企業の様に、経理部の役割が財務会計に限定されている場合には、

ある程度幅広く深く税務の知識が必要になってきますが、経理部の役割が、

財務会計に限定されていない企業では、コストパフォーマンスを考慮した

税務の知識で充分です。


経理部の役割が財務会計に限定されている場合は、財務会計と税務会計が主要な業務と

なりますので、特に、法人税・所得税・消費税などに関しては、税理士に負けない

くらいの、知識が必然的に必要になってくるはずです。


その他の税法においても、経理の仕事においては、固定資産税や償却資産税の

知識は必要になりますし、非上場会社の株式を売買する際には、相続税における、

非上場株式の評価に関する知識も必要になってきますので、経理部の役割が財務会計

だけに限定されている大企業では、税務のスペシャリストが求められるわけです。


それに対して、経理部の役割が、財務会計に限定されていない企業では、経理部の主要

な役割は、財務会計や税務会計ではなく、経営管理を目的とする管理会計が主要な業務

となりますので、業務に支障が無い範囲内の税務の知識があれば充分といえます。


例えば、一般的に、顧問税理士がいない企業はまずないでしょうから、経理部の役割が、

財務会計に限定されていない企業で働く人は、顧問税理士を有効に活用する方法を

考えるべきです。


顧問税理士を有効に活用するためには、日常業務において、税務上のメリットや税務上

のデメリットとして問題になりそうな、大きな金額の取引があるときや、取締役や

従業員に関する取引などについては、顧問税理士に、そのような取引が発生するたび

に、税務上問題が無いかどうかを確認すればよいのです。


そうすると、経理部の役割が、財務会計に限定されていない企業で働く人は、

一般的に、どの企業でも必要になるレベルの税務の知識さえ身につけていれば、

業務に支障がでることはないのです。


確かに、理想をいえば、業務で必要になる知識を全て身につけておくことが好ましい

ことは言うまでもありませんが、身につけるべき知識についても、当然、優先順位

というものがありますので、自分が果たすべき主要な役割が何かを認識できていれば、

その主要な役割に必要になる知識を身につけることに注力することが当たり前のこと

なのです。


このような視点で考えれば、経理部の役割が、財務会計に限定されていない企業で

働く人は、経営管理を目的とする管理会計が主要な業務なので、経営管理に関する

知識を身につけることが最優先事項ということになります。


経理部の役割が、財務会計に限定されていない企業での税務の位置づけは、優先順位を

考えると低いものなので、税務業務に関しては、積極的に知識を身につけようとする

のではなく、顧問税理士を上手く活用して、足りない税務の知識を補えばよいのです。


要するに、主要な経理部の役割が何かを認識すれば、脇役になる業務については、

そのコストパフォーマンスに応じた知識で充分だということです。


■財務の仕事が苦手な経理部の社員


経理の仕事の経験者でも、財務の仕事は得意かと尋ねられると、大多数の方が苦手意識を

口にされることが多いようです。


経理と財務の違いを理解されている方からすると、財務の仕事は、経理の仕事に含まれて

いると思われる方もいるかと思いますが、その認識は間違ってはいません。


確かに、広義の経理の仕事の範囲には、財務の仕事は含まれていますので、

財務会計分野の業務に特化している、大企業の経理部に所属している方を除いた、

大多数の経理部に所属する方に関しては、財務の仕事も、当然に、担当業務に

含まれています。


しかし、現実には、財務の仕事を担当している大多数の経理部の方は、財務の基本が

できていない人が多いのです。


例えば、財務の仕事に欠かせないのが、キャッシュフローを改善する為のスキル

になりますが、キャッシュフローを改善する為のスキルが身についていない人は

数多くいます。


また、財務の仕事では、運転資金の仕組みの理解も欠かせませんが、何故、運転資金

が発生するのかを理解できている人も残念ながら多くいますし、キャッシュコンバー

ジョンサイクルという用語すら知らない方も現実にいるのです。


このような話を聞くと、経理部に所属している方以外は、そんなことで、よく財務の

仕事を担当しているなと思われるかもしれませんが、これが現状なのです。


更に、財務の仕事の重要な業務に、資金繰り表の作成がありますが、論理的器整合性

のある資金表の作成方法すら知らない経理部の方が圧倒的に多いのです。


その証拠に、財務の仕事を担当している大多数の経理部の方は、予算の作成と

資金繰り表の作成の違いを理解できていないのです。


このような現状を踏まえると、経理部に所属している方は、これから財務の仕事を

していくために、どのような知識やスキルを身につけておけばよいかを把握して、

後は、そのスキルを身につける努力さえすれば、大多数の財務担当者を上回る、

財務のスキルを身につけることができます。


財務は、一見すると、難解の様に感じられる方が多いかもしれませんが、財務は、

難解なものではなく、至ってシンプルなものなので、基本と重要なポイントさえ理解

してしまえば、企業において、財務の仕事を遂行することは、難しいことではない

のです。


よって、財務の仕事が苦手な経理部に所属する方は、まずは、ワーキングキャピタルと

現金循環化日数の仕組みを理解することからはじめることが、財務の仕事ができるよう

になる近道といえます。


経営管理に必須の、財務計画作成基本スキルを身に付けたい方には、弊所の予算作成

セミナーの、 基本コースのセミナーがお勧めです。