経営分析


■経営分析

経営分析とは、経営資源であるヒト・モノ・カネを投入した結果を分析したり、

企業を取り巻く内外環境分析することです。


この分析には、定量分析と定性分析があります。


経営分析では、経営活動による結果の数値を的確に把握し、その数値にある背景を考え、

数値だけで判断できないところまで企業経営を考えることです。


一般的に、この分析は、経営戦略や経営計画を策定する前に行われています。


また、この分析の1つである定量分析は、財務分析と呼ばれています。


■定性分析

定性分析とは、数値で客観的に評価・分析できないような事象を

分析することです。


この分析は、数値化が難しい質の部分を主に言葉で評価分析するのですが、

そのような質の部分の評価を無理にある基準を設けることにより数値に

変換しても余り意味はありません。


この分析は、企業の外部環境と内部環境を分析することで、経営分析の基本

いえます。


経営分析における定性分析の対象である外部環境とは、世界・日本経済の状況、

企業が属する業界の状況等の環境分析をすることです。


この分析の対象である内部環境とは、経営者、従業員、経営方針、経営戦略、

事業領域、自社の強みと弱み、ブランド力、営業力、販売力等の環境分析を

することです。


そして、現在の経済環境における自社の強みと弱みを同業他社と比較する

この分析をすれば、自社の改善すべき課題などが顕在化します。


また、定性分析は、定量分析と異なり、人によって異なることがない客観的な

ことを基準にする分析手法ではないため、この分析の結果は、人によって

大きく内容が変わってくる可能性があります。


このことは、一般的にこの分析をする際にも、現状と何かを比較しないと、

現状が良いのか悪いのか判断できない為、必ず比較対象が必要になります。


その比較対象として、よく、「あるべき姿」という理想の状態が比較対象

になりますが、このあるべき姿自体も人によって大きく変わりうるもので

あるため、非常に主観的で評価の優劣の差が大きく出やすいのが、定性分析

であるといえます。


■定量分析

定量分析とは、具体的・客観的な定量データである数字に基づきある事象を

評価分析することです。


この分析は、経営分析においては、財務分析と呼ばれています。


財務分析とは、財務諸表を基に、企業を様々な角度から分析することです。


この英語表記は、Financial Analysisです。


定量分析は、財務諸表や資金表を分析することにより、会社の収益力や財政状態を

客観的に把握することができます。


定量分析の仕事は、企業に財務部や経営企画部が存在せず、経理部しかない場合は、

経理の仕事になります。


この分析では、各種アプローチ手法を活用し、時系列比較や同業他社等との比較を

することにより、企業の強みや弱み、改善すべき課題などが顕在化します。


また、定量分析とは、別な視点から説明すると、会社を知ることであり、

会社を知る為に、会社の事が客観的に把握できる財務諸表を利用して

分析することです。


この分析をする際は、分析対象と他の何かを比較しなければ、

数値が良いか悪いかの判断ができませんので、一般的には、同業他社の

財務指標データと比較することになります。


同業他社の財務指標データを調査する際は、財務省が公表している

法人企業統計調査のデータが有用です。


この分析をする際は、様々な財務指標を活用しますが、財務分析指標の中で、

重要な財務指標をあげると、固定長期適合率、経常収支比率、回転期間が

特に重要といえます。


よって、財務分析において、固定長期適合率、経常収支比率、回転期間を

考慮しないことは、この分析を何もしていないことと同じことで、これらの

財務指標は、この分析において必須の分析事項です。


そして、財務分析をする際に必要な財務諸表とは、損益計算書(PL)、

バランスシート(貸借対照表・BS)、キャッシュフロー計算書の財務3表であり、

資金繰り表も、当然、分析対象です。


更に、詳細な財務分析をする際には、用途に応じた資金表を利用する

ことになります。


また、財務分析をする際は、1年分のみの決算書を用意するだけでは

不十分で、最低3事業年度分は必要であり、その他では比較をしたい

同業他社の財務諸表も同じく準備をし、更に、同業種の業界標準の数値も

最低限必要になります。


尚、企業の生命線は資金繰りであるので、財務分析において最も重要な分析は、

安全性分析と効率性分析であり、安全性分析と効率性分析により、企業の財務

の健全性と企業の真の支払能力を掴むことが財務の分析において最優先される

べきことなのです。


ちなみに、財務分析資格には、証券アナリストの資格がありますが、

証券アナリストになる為の勉強をしても、実務で使える分析の手法

は身につきません。


財務分析資格を得る為に証券アナリストの勉強をするよりは、企業の財務構造

を理解していないと作成することができない、予算作成のスキルを身につける

ことこそが、現場で役に立つ分析スキルを身につけることに繋がります。


■財務分析の種類

財務分析においては、財務諸表を基に分析をするわけですが、

この分析手法には主に下記の5つのアプローチ手法があります。


①収益性分析(企業が営業活動により利益を獲得する能力を見る分析)

収益性分析とは、経営分析における財務分析の分析手法の一つです。


この分析の目的は、企業が営業活動により利益を獲得する能力を

見るためであり、この分析は、損益計算書(PL)のデータを利用して

投資効率を分析することになります。


また、財務分析の分析手法には、この分析以外では、効率性分析、

安全性分析、成長性分析、生産性分析の分析方法があります。


そして、この分析をすることで、企業のブラント力、営業力、販売力、

財務力等の企業の真の収益力が測定することが出来ます。


また、収益性分析の主な指標は下記の通りです。


主な収益性指標

・売上高総利益率
・売上高営業利益率
・売上高経常利益率
・売上高当期純利益率
・販管費率
・EBITDAマージン
・EBITDA倍率


ちなみに、収益性分析をする際に利用する各種効率性指標は、自社の

時系列データの推移を比較する為に利用したり、同業他社や同業種の

平均値と比較をしたりする為に活用します。


尚、この分析において、最も重要な指標は、売上高営業利益率で、

この利益率の改善がバランスシートの改善にも繋がり、企業の発展にも

欠かせないので、この分析を定期的に実施することは必要不可欠です。


②安全性分析(企業の財務の健全性を評価測定する分析)

安全性分析とは、経営分析における財務分析方法の1つです。

企業の財務の健全性を評価測定するものであり、この分析では

企業の支払能力を評価することが最も重要です。


また、安全性分析の主な指標は下記の通りです。

主な安全性指標

・流動比率
・当座比率
・固定比率
・固定長期適合率
・インタレストカバレッジ
・損益分岐点
・自己資本比率
・資金運用表
・資金移動表
・キャッシュフロー計算書
・キャッシュフロー流動負債倍率


また、企業が事業活動を継続していく為には、収益性の向上と財務の健全性を

維持することが欠かせませんので、安全性分析と収益性分析は定期的に

実施する必要があります。


そして、安全性分析は、企業の実績の財務諸表や資金表だけに利用するので

はなく、この分析は、理想のバランスシートにする為の財務方針を確立する

為にこそ活用すべきものなのです。


尚、財務レバレッジを効かせる財務戦略をとることは、企業の安全性と

収益性がトレードオフの関係になっていることを意味しますので、

安全性分析と収益性分析は同時に行い、バランスの取れた財務分析を

するべきです。


ちなみに、与信管理業務の際は、取引先である得意先や仕入先の安全性分析は

当然必要になります。


③効率性分析(ヒト・モノ・カネが産み出した付加価値の分析)

効率性分析とは、経営分析における財務分析の分析手法の一つです。


この分析をする目的は、貸借対照表(BS)・損益計算書(PL)の

財務諸表データを利用して、どれくらい資本を有効活用しているかを

評価測定することです。


効率性分析は、企業がどれだけ資本を有効活用して事業活動をしているかを

客観的に示す分析手法なのです。


また、この分析で利用する資本は貸借対照表(BS)の項目の自己資本と

他人資本があります。


その資本を活用した結果が損益計算書(PL)の項目の売上高や利益になり、

効率性分析はBSとPL項目のデータを利用する事により効率性指標の

算出をします。


そして、この分析をする際に利用する各種効率性指標は、自社の

時系列データの推移を比較する為に利用したり、同業他社や同業種の

平均値と比較をしたりする為に活用します。


尚、主な効率性指標は下記の通りです。


・総資産回転期間
・固定資産回転期間
・棚卸資産回転期間
・売上債権回転期間
・仕入債務回転期間
・総資産回転率(総資本回転率)
・売上債権回転率
・棚卸資産回転率
・仕入債務回転率
・総資産利益率(ROA)
・株主資本利益率(ROE)
・交差比率
・キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)


ちなみに、効率性分析では、回転期間と回転率を算出しますが、

回転率と回転期間の計算式は正反対の計算式になります。


④生産性分析(企業がどれくらい資本を有効活用しているかを評価測定する分析)

生産性分析とは、企業が事業に投入した、ヒト・モノ・カネが産み出した

付加価値を分析することです。


この分析は、経営資源の単位当たりの生産性を把握して企業の競争力を

検証することです。


この分析は、投入した経営資源のインプットと結果であるアウトプット

の比率の分析なのです。


また、生産性分析は、インプットであるヒト・モノ・カネとアウトプットである

付加価値を分析することですが、ヒトと付加価値の関係は労働生産性で、

モノと付加価値の関係は設備生産性であり、カネと付加価値の関係は

資本生産性です。


そして、この分析の労働生産性を算出する際のヒトについては、

平均従業員数を用います。


この分析の設備生産性を算出する際のモノについては、有形固定資産額

を活用します。


この分析の資本生産性を算出する際のカネについては、総資本(総資産)

を活用します。


生産性分析の基本の分析項目の計算式は下記の通りです。


主な生産性指標

・労働生産性=付加価値÷平均従業員数

・設備生産性=付加価値÷有形固定資産額

・資本生産性=付加価値÷総資本(総資産)

・売上高付加価値率=付加価値÷売上高


ちなみに、生産性分析で利用する付加価値とは、企業が事業活動により

生み出した価値(利益)のことです。


⑤成長性分析(企業の将来の成長の可能性を判断する分析)

成長性分析とは、企業の売上高や利益等の推移を分析することにより、

企業の将来への成長の可能性を判断する指標です。


この分析は、売上や利益等のフロー面や、総資産(総資本)や株主資本等の

ストック面からも分析します。


この分析は、自社の時系列データの推移を比較する為に利用したり、

同業他社や同業種の平均値と比較をしたりする為に活用します。


成長性分析の主な指標は下記の通りです。


主な成長性指標

・売上高成長率
・営業利益成長率
・経常利益成長率
・自己資本増加率
・総資本増加率


また、この分析において重要なことの1つに、業界市場規模の伸びと

企業の成長率の関係があります。


企業の売上成長率が10%だったとしても、市場全体の成長率が企業の

売上成長率を上回っていれば、企業の市場シェアは低下していること

になります。


成長性分析の際は、企業の成長率と客観的に比較できる市場規模等の

比較対象が必要なのです。


そして、企業が急成長するときは、主に2つの問題が発生しますが、

1つは資金繰りの問題で、企業は成長により運転資金が日を追うごとに

増加するので、企業の成長性分析をする時は、安全性分析と合わせて

分析する必要があります。


もう1つの問題は、人材の問題で、企業の成長に人材がついていかず、

業務プロセスに支障をきたすようになります。


人材の問題は企業の成長を阻害する最も大きな要因といっても過言では

ありませんので、人材の質を補う為には、業務プロセスのシステム化と

業務プロセスの可視化は必要不可欠です。


また、同業者で同規模の売上や総資産・従業員数の企業を成長性分析した際に、

自社の売上と利益の成長率を上回っている場合は、形に表れないブランド力、

営業力、販売力等の差であるはずです。


成長性分析をすることにより、現時点での自社のブランド力、営業力、

販売力をチェックできます。


・静態的分析(ストック分析)

静態的分析とは、財務分析に必要な安全性分析の手法の1つです。


静態的分析とは、ストック分析とも呼ばれています。


静態的分析は、企業の短期的支払能力と長期的支払能力を一時点

の貸借対照表の情報だけを使い分析する手法です。


静態的分析はストックである貸借対照表の資産と負債を比較して

企業の支払能力を分析する貸借対照表分析の手法です。


また、ストック分析により、企業の短期的支払能力を掴む為には、流動比率や

当座比率等の指標を利用して分析し、企業の長期的支払能力を分析する為には、

固定比率、固定長期適合率、D/Eレシオ等の指標を活用して分析します。


静態的分析において、企業の短期的支払能力をみるということは、1年以内の支払能力

を見ることなので、支払義務である流動負債とその支払原資である流動資産を比較すれ

ば短期的支払能力がある程度把握することが出来ます。


但し、流動資産の中に、不良債権や不良在庫など換金性の低いものが

含まれている場合は、流動比率や当座比率だけで短期的支払能力を

判断することは出来ません。


次に、静態的分析において、企業の長期的支払能力をみるということは、

資産・負債・資本の財務バランスを見ることなので、固定資産の資金の調達(源泉)と

他人資本と自己資本の関係を分析し長期的支払能力を把握します。


尚、ストック分析は、企業の一時点の貸借対照表の情報だけを使い分析する手法

なので、企業の真の支払能力を掴むには限界があります。


・動態的分析(フロー分析)

動態的分析とは、財務分析に必要な安全性分析の手法の1つです。


動態的分析は、フロー分析とも呼ばれています。


動態的分析は、企業の支払能力を貸借対照表と損益計算書の数値を組合わ

せて分析する手法です。


動態的分析は、静態的分析に比べて資金のフローを的確に捉えることが

できる企業の支払能力を分析する手法です。


また、フロー分析により、企業の支払能力を掴む為には、回転期間の分析や

資金移動表の分析等を活用します。


動態的分析の回転期間分析を活用すると、静態的分析において、流動比率や

当座比率が著しく悪かった企業が、必ずしも資金繰りの状況が悪い企業ではなく、

実際は資金繰りの状況が良い企業であることが判明したりすることもあります。


このフロー分析の回転期間分析では、企業の実際の回収サイトや支払サイト等

の企業の実際の資金のフローを的確に把握できる為に、静態的分析において

見過ごされていた、企業の真の支払能力を把握することができます。


次に、動態的分析の資金移動表分析は、損益計算書(PL)の各勘定科目と

貸借対照表(BS)の各勘定科目をリンクさせることで資金収支を的確に捉え、

実際の事業活動の資金フローを分析することができます。


この、フロー分析の資金移動表分析では、事業活動毎の資金収支が的確に把握

できる為、企業がどうやって資金を得て、その資金を何に使っているのかが

判明します。


動態的分析である回転期間分析や資金移動表分析等をすれば企業の真の支払能力

が把握でき、粉飾決算も見破ることができるのです。


尚、動態的分析を活用することで、経常収支がマイナスの状態である

経常収支比率が100%を下回っている事業年度が数期間続いた場合に、

資金ショートの可能性が高くなることや、利益が多額に計上されていても

倒産に至る、黒字倒産の可能性なども見逃すこともなくなります。


なお、財務分析の手法を身に付けたい方には、 弊所の「財務分析セミナー」が

お勧めです。