会社を強くすることと会社を弱くすること


会社を強くすることと会社を弱くすることは、原理原則で考えれば、深く考えるまで

もなく、直ぐに明白になる論点といえます。


そのことを説明する題材として、つい最近まで、どの企業でも、こぞって導入していた

人事制度である、成果主義という観点から考えてみたいと思います。


一時期は、業務成果のみで賃金と成果を結びつける成果主義が一世を風靡しましたが、

最近では、成果主義を導入して業績が悪化する企業が多かったり、成果主義の落とし

穴に気づく企業も増えて、あれほど礼賛されていた成果主義も下火になっています。


一時は、会社にとっても従業員にとっても最適と思われていた成果主義に、

どんな問題があったというのでしょうか?


それは、成果主義の最大のメリットでもあることが、実は、成果主義の最大のデメリット

でもあったのです。


その成果主義のメリットであり、デメリットでもあったこととは、結果である売上や

利益を評価の対象にしたことです。


個人の評価対象を結果だけに限定すると、各個人は、自分の結果だけを重視し、

同僚・組織・会社のことを、考慮しなくなる人ばかりになってしまうのです。


要するに、各社員が、自分の利益のことだけを考えて行動し、自分の周りのことを

考慮しなくなり、企業に様々な弊害が発生し、会社の業績に影響するようになるのです。


例えば、ある社員が休んでいて、その社員の机の上に、顧客に送付すべき荷物が

置いてあったとします。


その顧客に送付すべき荷物が、明日までに顧客の手元に届けなければ、

会社の信頼が損なわれてしまうとします。


そのような状況において、各社員が、自分の利益のことだけを考えて行動し、

自分の周りのことを考慮しなくなっていたらどうなるでしょうか?


間違いなく、その荷物のことを気にする社員は誰もいないでしょうから、その荷物が

明日までに顧客の手元に届くことはなく、会社が顧客の信用を失い、貴重な顧客を

競合他社に奪われることになるのです。


自分の利益のことだけを考えて行動する社員が多い企業は、仕事の成果は足し算に

しかなりませんが、自分の周辺のことを気にする社員が多い企業は、仕事の成果を、

足し算ではなく掛け算にすることができるのです。


やはり、仕事の成果が、足し算ではなく掛け算になる方が、会社にとっても好ましい

ことであることはいうまでもありませんよね。


このように、会社を強くすると思われていた成果主義が、実は、会社を弱くすること

になっていたのです。


しかし、ここで間違ってはいけないことは、成果を追い求めることが悪いのではなく、

人事評価の大半を、成果だけに頼ることに問題があるのです。


そうすると、成果主義と同じようなことになりそうなのが、会計に力を入れている

企業です。


会計に力を入れている企業の目的は、業績のタイムリーな把握につきるのでしょう

から、そのために、会計のシステム投資に、様々な経営資源を投入しているわけです。


ここで考えなくてはならないことは、業績のタイムリーな把握とは、何を把握しようと

しているのでしょうか?


業績のタイムリーな把握という言葉を聞くと、盲目的に受け入れてしまいそうですが

そのような美辞麗句にこそ、気をつけるべきです。


業績のタイムリーな把握とは、結局、会社の利益という結果を知りたいのです。


この頁を御覧の賢明な方であれば、企業が重要視すべきことは、結果ではなく、

過程であることをご存知だと思います。


過程とは原因であり、原因が結果に影響を及ぼすのです。


このような基本的な原理原則を知っている方は、結果の把握に力を入れるのではなく、

結果に影響を及ぼす、原因であるプロセス(過程)の把握に力を入れるべきことを

理解しているのです。


ゆえに、基本的な原理原則を理解している経営者の企業では、会計に力を入れる

のではなく、結果に至るプロセス管理に力を入れているのです。


賢い経営者は、会計が会社を弱くすることを知っています。


要するに、会社を強くしたければ、プロセス管理に力を入れ、会社を弱くしたければ、

会計に力を入れたらよいのです。


会社を強くすることや会社を弱くすることも、難しく考えるのではなく、シンプルに、

原理原則で考えれば、何が問題で、何をするべきかが明確になるわけです。