原価計算の種類


■原価計算とは

製造業の予算を作成する際には、原価計算が欠かせません。


原価計算とは、売上高に対する製品やサービスの原価を計算することです。


一般的に、この計算は、製造業における、製品を製造する為に要した原価を

把握する計算方法のことを指しています。


この計算方法は、実際原価計算、標準原価計算、予定原価計算に大別できます。


この原価計算に関する業務は経理部の役割ですし、重要な経理の仕事です。


この計算の主たる目的としては、外部報告の為の財務会計と経営管理の為の

管理会計に利用することです。


この計算をすることで、正確な財務諸表が完成し、製品ごとの販売価格を

決定することができます。


副産物、仕損、作業屑、歩減、歩留率などは、原価計算に必須の概念といえます。


来期の製品の売値を決定する為には、製造予算を作成する必要があり、

製造予算の作り方としては、製品別に、生産量、原材料在庫、仕掛品在庫、

製品在庫、製品の製造原価を作成します。


また、この計算の分類としては、実際原価計算、標準原価計算、予定原価計算が

ありますが、それらは、業種による違いにより、個別原価計算か総合原価計算を

することになります。


そして、原価計算には、原価を固定費と変動費という視点から見た、

直接原価計算があります。


直接原価計算は、製品の採算性の評価に適した方法で、実際原価計算、

標準原価計算、予定原価計算に、用いることができます。


尚、原価計算で重要なのは、製造予算を作成する際に利用する標準原価計算や

予定原価計算です。


見積原価を算定していなければ、実際原価だけを計算しても、その実際原価の

評価をすることができませんので、実際原価と予定原価を計算することは、

原価計算の、車の両輪であると認識するべきです。


■原価計算の種類

原価計算は、実際原価計算、標準原価計算、予定原価計算に大別できますが、

その他にも、用途に応じて、様々な種類がありますので、それらについて

解説します。


①実際原価計算

実際原価計算とは、製品の製造に実際に要した実績値を基に原価を計算を

することです。


この計算方法は、個別原価計算と総合原価計算に分類することができ、

この計算の目的としては、財務会計と管理会計の為に利用することです。


この計算方法は、財務諸表を作成する為には必ず必要であり、

財務管理の為には、実際原価計算だけでなく、標準原価計算や

予定原価計算が必要になります。


また、実際原価計算は、個別原価計算と総合原価計算に大別できますが、

個別原価計算とは、個別に受注した製品の原価計算に適した方法であり、

総合原価計算とは、製品を大量生産する場合に適した原価計算です。


尚、実際原価計算のデメリットや欠点としては、実際原価は価格の変動が

激しいことと、原価確定のタイミングが遅れることです。


②標準原価計算

標準原価計算とは、統計や科学的手法などに基づいて、製品を一つ作る為に、

幾らコストが発生するかをあらかじめ見積もっておき、その見積原価である、

製品1単位当たりの原価で、製品の原価を計算する方法です。


この計算方法は、統計や科学的手法などに基づいて、直接材料費、

直接労務費、製造間接費の各原価要素ごとに、製品1単位あたりの標準原価を

設定し、それらの各原価要素を合計して、原価標準を計算します。


また、標準原価計算のメリットとしては、予算編成の為に、製造原価の予算作成に

活用できることです。


標準原価計算のデメリットとしては、統計や科学的手法などに基づいて、

標準原価を算定する必要があるので、算定作業が複雑になりすぎて、

事務作業の負担が大きいことです。


企業予算を作成する際は、標準原価計算ではなく、過去の実績と今後の見通しを

加味した、予定原価計算を用いる方が、より現実的で実用的といえます。


③予定原価計算

予定原価計算とは、過去の実績と今後の見通しを加味して、

製品を一つ作る為に、幾らコストが発生するかを計算する方法です。


現実的な予定原価計算は、統計や科学的手法などに基づく

標準原価計算よりも、予算の作成に適した方法です。


この計算方法は、前年の実績値などに基づいて、現実的な、直接材料費、

直接労務費、製造間接費の各原価要素を設定して、予定製品原価を計算する

方法なので、予定原価計算と標準原価計算は、異なる計算方法といえます。


また、この計算方法を活用することで、製造予算を作成することができるので、

管理会計には、欠かせない原価計算の計算方法です。


そして、予定原価計算のメリットとしては、予算編成の為に、製造原価の

予算作成に活用できることです。


予定原価計算のデメリットとしては、適正な製品在庫を実現する生産量の計画を

作成できなければ、予算としての機能を果たさないことです。


④直接原価計算

直接原価計算とは、原価を固定費と変動費という視点から見た

原価の計算方法のことです。


この計算方法は、製品の採算性の評価に適した方法であり、

実際原価計算、標準原価計算、予定原価計算に、用いることが出来ます。


この直接原価計算は、当期総製造費用を変動費と固定費に分類し、

変動費だけを用いて、当期総製造原価を計算し、固定製造費用は

期間費用として計算することになり、直接原価計算は、

利益計画に役立つ原価計算です。


また、この計算方法では、販売費及び一般管理費も、変動費と固定費とに

分けて計算することになるので、直接原価計算における、損益の計算方法は、

下記のようになります。


直接原価計算の損益計算方法

・売上高-変動売上原価=変動製造マージン

・変動製造マージン-変動販管費=貢献利益

・貢献利益-固定製造費用-固定販管費=営業利益


そして、外部報告目的の財務会計では、直接原価計算の方法を用いて作成した

損益計算書は、認められていませんので、外部報告目的の財務諸表は、

全部原価計算にて作成する必要があります。


尚、直接原価計算は、管理会計の為に利用される方法で、全部原価計算は、

財務会計の為に利用される方法といえます。


⑤全部原価計算

全部原価計算とは、製品の製造に関連するコストは、固定費と変動費を

区別せず、すべて製造原価に含め、製造コスト以外の販売費及び一般管理費は、

期間原価とする方法のことです。


全部原価計算は、外部報告目的の財務会計にて利用する原価の計算方法です。


この計算方法は、会社法会計、金融商品取引法会計、税務会計では、

必ず利用しなければなりませんが、個別製品の収益性を評価するのが難しい

ことが問題点です。


また、全部原価計算の問題点を、解決するための手法が、直接原価計算であり、

直接原価計算とは、原価を固定費と変動費という視点から見た原価計算のことで、

直接原価計算は、製品の採算性の評価に適した方法です。


そして、この計算方法の問題点として挙げられることが多いのが、生産量を

増やすほど、製品1個当たりの固定費が小さくなるので、製品を多く生産して

しまうことです。


このような全部原価計算の問題点を解決する方法としては、適正在庫を維持する

生産計画を立てることで、そのような初歩的な問題は解消されます。


尚、全部原価計算は、フルコスティング(FC)とも呼ばれています。


⑥総合原価計算

総合原価計算とは、製品を販売予測に基づいて大量生産する場合に用いる

原価の計算方法のことです。


この計算方法の種類としては、単純総合原価計算、組別総合原価計算などが

あり、個別原価計算に比べて、手間がかからない計算方法です。


実際原価計算、標準原価計算、予定原価計算において、総合原価計算は活用

されています。


この総合原価計算と個別原価計算の違いとしては、総合原価計算は、

製品を見込生産や大量生産する企業で用いられる計算方法で、

個別原価計算は、顧客の注文に合わせて生産する、受注生産をしている

企業で用いられる計算方法です。


そして、総合原価計算の流れとしては、原価要素である、材料費、労務費、経費

の当月消費高が、仕掛品に集計され、完成品原価だけが、仕掛品から製品に集計

されることになります。


総合原価計算の主な種類とその内容は下記の通りです。


総合原価計算の主な種類と内容

・単純総合原価計算

単純総合原価計算とは、1種類の製品を販売予測に基づいて

大量生産する場合に利用する原価の計算方法のことです。


この計算方法は、製造工程の数により、単一工程単純総合原価計算と

工程別単純総合原価計算を、使い分けることになります。


単一工程単純総合原価計算とは、1種類の製品を

単一工程で大量生産する場合に利用する原価計算のことです。


工程別単純総合原価計算とは、1種類の製品を複数工程で大量生産する場合

に利用する原価計算のことです。


また、単純総合原価計算の流れとしては、原価要素である、材料費、労務費、

経費の当月消費高が、仕掛品に集計され、完成品原価だけが、仕掛品から製品

に集計されることになります。


・組別総合原価計算

組別総合原価計算とは、種類の異なる複数の製品を大量生産する場合に

用いる原価の計算方法のことです。


組別総合原価計算は、製造工程の数により、単一工程組別総合原価計算と

工程別組別総合原価計算を、使い分けることになります。


この計算方法は、製造原価を種類の異なる組別に集計するため、

費用を特定の組ごとに把握できる組直接費と、各組に、共通的に発生する

費用などは、組ごとに費用が把握できないので、組間接費として集計します。


総合原価計算の種類としては、単純総合原価計算、組別総合原価計算、

等級別総合原価計算、工程別総合原価計算、連産品総合原価計算があります。


ちなみに、組別総合原価計算では、種類の異なる製品のグループのことを、

組と呼んでいます。


また、この計算方法においては、組直接費については各組に直接賦課し、

組間接費については合理的な配賦基準によって各組に配賦することになります。


そして、組別総合原価計算の流れとしては、原価要素である、材料費、労務費、

経費の当月消費高が、組別の仕掛品に集計され、完成品原価だけが、組別の

仕掛品から組別の製品に集計されることになります。


・等級別総合原価計算

等級別総合原価計算とは、同じ種類の製品を、サイズ、品位、形状、

重量などによって等級に区別する場合に用いる原価の計算方法のことです。


この計算方法は、製造工程の数により、単一工程等級別総合原価計算と

工程別等級別総合原価計算を、使い分けることになります。


この計算方法では、最初に、製造する製品に等級をつけます。


次に、各等級製品の単位あたりの価値の割合である等価係数を設定します。


続いて、各等級製品の等価係数に、各等級品の生産量を掛けて積数を算出して、

最後に、原価計算期間の完成品総合原価を、積数の比で按分し、

各等級製品の完成品原価を計算します。


各等級製品の積数と各等級製品の完成品原価の計算式は、下記の通りです。


各等級製品の積数と各等級製品の完成品原価の計算式

①各等級製品の積数=各等級製品の完成品数量×等価係数

②各等級製品の完成品原価=
完成品総合原価÷各等級製品の積数合計×各等級製品の積数


そして、等級別総合原価計算の流れとしては、原価要素である、材料費、

労務費、経費の当月消費高が、仕掛品に集計され、完成品原価を、積数の比で

按分して、仕掛品から各等級製品に集計されることになります。


・工程別総合原価計算

工程別総合原価計算とは、製造プロセスにおける、生産工程が複数あり、

製品を大量生産する場合に利用する原価の計算方法のことです。


工程別総合原価計算の計算方法には、累加法と非累加法があり、

製造工程ごとに原価を計算する方法です。


累加法とは、前工程で完成した原価を、次の工程の始点で前工程費として投入

する方法です。


非累加法には、各工程ごとに原価計算をする方法と、各原価要素別に、

全工程を纏めて計算する方法があります。


この計算方法は、製品の製造プロセスが複数あり、製品を大量生産

する企業に適した原価計算で、この方法を利用すると、より正確な

原価計算ができ、各工程ごとの原価管理をすることができます。


そして、工程別総合原価計算の流れとしては、各工程の原価要素である、

材料費、労務費、経費の当月消費高が、各工程の仕掛品に集計され、

その工程で完成したものだけが、次の工程の仕掛品に集計されること

になります。


・連産品総合原価計算

連産品総合原価計算とは、同じ工程で、同じ材料を用いることにより、

複数の製品を生産する場合に利用する原価の計算方法のことです。


連産品総合原価計算のポイントは、製造原価を各連産品に配分する方法

を決定することです。


この計算方法では、各連産品が分離される点までに

要した原価を、各連産品ごとに、把握することができないので、

各連産品が分離される点までに要した原価を、どのような基準で、

各連産品に配分するのかが重要なポイントになります。


また、連産品総合原価計算にて、各連産品に配分する方法としては、

売価を基準とする方法や数量を基準とする方法などがあります。


売価を基準とする方法は、各連産品の生産数量に、各連産品の売価を乗じて

算出される積数により、製造原価を各連産品に配分する方法です。


数量を基準とする方法は、各連産品の重量などの比率により、製造原価を

各連産品に配分する方法です。


そして、連産品総合原価計算の流れとしては、各連産品を分離する前までの、

原価要素である、材料費、労務費、経費の当月消費高が、仕掛品に集計され、

各連産品を分離する前の原価を、何らかの基準により各製品に配分することで、

仕掛品から各連産品に集計されることになります。


⑦個別原価計算

個別原価計算とは、顧客の注文に合わせて製品を生産する、受注生産を

している企業で用いられる原価の計算方法のことです。


この計算方法では、製品の設計図である製造指図書に従って製品を生産する

ことになり、建設業やソフトウェア業に適した計算方法です。


実際原価計算、標準原価計算、予定原価計算において、個別原価計算は活用

されています。


この個別原価計算は、単純個別原価計算と部門別個別原価計算に分類でき、

単純個別原価計算と部門別個別原価計算の違いは、製造間接費の配賦方法です。


また、この計算方法では、製造直接費は製造指図書に基づき製品に賦課し、

製造間接費はなんらかの基準により、製品に配賦することになります。


尚、個別原価計算のメリットとしては、プロジェクト別損益管理に適している

ことです。


個別原価計算のデメリットとしては、原価計算の仕組みが複雑になって、

管理コストが増加することです。


単純個別原価計算と部門別個別原価計算の内容は下記の通りです。


・単純個別原価計算

単純個別原価計算とは、製造工程が複数ある場合でも、原価計算を複雑にしない為に、

部門別原価計算をしない原価の計算方法のことです。


この計算方法では、製造間接費を配賦する際には、1つの配賦基準

によって各製品に配賦することになります。


この単純個別原価計算は、個別原価計算の種類の1つですが、

個別原価計算は、製造間接費の配賦方法の違いにより、

単純個別原価計算と部門別個別原価計算に分類できます。


また、単純個別原価計算の流れとしては、直接把握することができる、

材料費、労務費、経費の消費高が各原価要素から仕掛品に集計され、

製造間接費については、各原価要素から製造間接費勘定の借方に集計され、

実際配賦や予定配賦により、仕掛品に集計されることになります。


尚、個別原価計算において、製造指図書にて、製品を1個作るか、

製品を1個以上作るかにより、純粋個別原価計算とロット別個別原価計算に

分けることができます。


・部門別個別原価計算

部門別個別原価計算とは、製造間接費については、部門個別費と部門共通費に

分類して、部門個別費は特定部門に賦課し、部門共通費については、合理的な

配賦基準を用いて各部門に配賦する原価の計算方法のことです。


この部門別個別原価計算のポイントは、部門別の原価管理ができるように、

各部門の製造間接費を、製品の製造を直接行う製造部門と、製品の製造を

間接的にサポートする補助部門に分類することです。


また、この計算方法では、発生した部門を直接特定できる部門個別費

については、特定部門に賦課し、複数の部門で共通して発生する部門共通費

については、各部門共通費に関連する配賦基準を用いて、各部門に配賦する

ことになります。


ちなみに、一般的な各部門共通費毎の配賦基準としては下記の通りです。


一般的な各部門共通費毎の配賦基準

・不動産賃料(各部門の使用している床面積の割合)
・固定資産税(各部門の使用している床面積の割合)
・建物保険料(各部門の使用している床面積の割合)
・工場償却費(各部門の使用している床面積の割合)
・工員厚生費(各部門の従業員数の割合)


尚、部門別個別原価計算にて、補助部門に集計した補助部門費は、各製造部門に

配賦することになり、その配賦方法には、直接配賦法と相互配賦法があります。


直接配賦法とは、補助部門費を補助部門には配賦せず、直接、製造部門に配賦

する方法です。


相互配賦法とは、最初に、補助部門費を、補助部門と製造部門に配賦して、

次に、補助部門費を、製造部門に配賦する方法です。