営業キャッシュフローがマイナスの原因


営業利益が黒字の企業でも、営業キャッシュフローが赤字の企業は珍しくありません。


では、営業CFがマイナスになる原因は、一体どこにあるのでしょうか?


キャッシュフローの仕組みを理解できていない方や、キャッシュフロー計算書に馴染み

がない方にとっては、営業CFがマイナスになる原因を問われても、返答することは

難しいでしょう。


しかし、資金表であるCF計算書を作成したことがある方や、キャッシュフロー計算書

に詳しい方なら、どこに問題がありそうかは、具体例を挙げることができるはずです。


まずは、キャッシュフロー計算書の営業CFの主要項目を確認してみる

ことにします。


■営業キャッシュフローの主要項目

・税金等調整前当期純利益
・減価償却費
・減損損失
・のれん償却額
・退職給付引当金の増減額
・貸倒引当金の増減額
・受取利息及び受取配当金
・支払利息
・有形固定資産売却損益
・有形固定資産除売却損益
・有価証券売却損益
・有価証券評価損益
・投資有価証券売却損益
・投資有価証券評価損益
・売上債権の増減額
・棚卸資産の増減額
・仕入債務の増減額
・その他の流動資産の増減額
・その他の流動負債の増減額


キャッシュフロー計算書に馴染みがない方は、営業CFの内訳の項目

を見ると様々な項目があり、それだけで圧倒されてしまうかもしれません。


CF計算書に詳しい経理部に所属している方なら、営業キャッシュフローの内訳は、

税金等調整前当期純利益がスタートラインとなり、そこから、上記に示している

営業CFの主要項目を足したり引いたりして、営業CFを算出することを知っている

でしょうから、このキャッシュフローがマイナスの原因は、営業CFの内訳の中に

あることは、当たり前なわけです。


例えば、営業キャッシュフローの内訳にある、税金等調整前当期純利益が赤字に

なっていれば、当然、それが、営業活動によるCFが赤字の原因と特定することは

容易にできます。


では、非現金支出費用である、減価償却費、減損損失、のれん償却額等が前期と

比較して、急減している場合に、そのことが、営業CFがマイナスの原因

といえるのでしょうか?


非現金支出費用が多ければ、税金等調整前当期純利益の金額は、それだけ少なく

なりますが、結局、キャッシュフロー計算書において、非現金支出費用は、

税金等調整前当期純利益の金額に加算されることになります。


この非現金支出費用は、営業キャッシュフローには、中立要因となりますので、

非現金支出費用の金額が多かろうと少なかろうと、本質的な営業CFに

影響を与えることはないのです。


このように考えると、営業利益が黒字で、営業キャッシュフローが赤字の原因は、

非現金支出費用以外の、営業CFの内訳の中にある項目が原因となるわけです。


続いて、営業キャッシュフローの内訳にある、有形固定資産売却損益、

有形固定資産除売却損益、有価証券売却損益、有価証券評価損益、

投資有価証券売却損益、投資有価証券評価損益は、営業CFを計算する

上では、除外して計算することになります。


除外して計算する理由は、これらの項目は、営業活動とは全く関係ないからです。


よって、当然、営業CFを算定する際も考慮する必要がないのです。


次に、間接法によるキャッシュフロー計算書に馴染みがある方が疑問に思う点が、

受取利息・受取配当金、支払利息の取り扱いだと思いますが、そもそも、これらも、

営業活動とは全く関係ありませんので、営業CFにも影響させるべきではありません。


日本の会計基準においては、キャッシュフロー計算書を作成する際は、

①受取利息・受取配当金、支払利息を営業活動として認識するか、

②受取利息・受取配当金は投資活動で、支払利息は財務活動とするかの、

いずれかの選択が認められている背景があります。


そして、これらについては、営業キャッシュフローがマイナスの原因となる、

本質的な問題とは関係ありませんので、重要視する必要はないでしょう。


このように考えていくと、営業CFの内訳の中で残されている項目としては、

売上債権の増減額、棚卸資産の増減額、仕入債務の増減額、その他の

流動資産の増減額、その他の流動負債の増減額になります。


一般的に、営業外取引の債権債務が計上される、その他の流動資産の増減額、

その他の流動負債の増減額は、当然、営業とは無縁なものなので、営業CFが赤字の

原因となる、本質的な問題とは関係ないことは説明するまでもないことです。


そうすると、営業キャッシュフローがマイナスの原因は、売上債権の増減額、

棚卸資産の増減額、仕入債務の増減額の3つが、営業CFが赤字になる根本的な原因

といえるわけです。


ただし、売上債権の増減額、棚卸資産の増減額、仕入債務の増減額の金額だけを

確認して、営業キャッシュフローがマイナスの原因と結論づけて分析が終わって

しまっては、何も分析したことにはなりません。


営業CFが赤字になる原因が、売上債権、棚卸資産、仕入債務にある

と特定することは、分析のスタートラインにすぎません。


よって、これらの項目が、何故、このような数値になっているのかを分析しなければ、

営業CFがマイナスの本当の原因は、特定することはできないのです。


要するに、営業キャッシュフローがマイナスの原因は、売上債権、棚卸資産、

仕入債務にあるということは、運転資金の増減が、営業CFに大きく影響している

ことになりますので、運転資金が増減する仕組みを理解しなければ、営業CFが

マイナスの原因を特定することは不可能ということになります。


ゆえに、財務の観点から、営業CFがマイナスの原因を把握したければ、

運転資金についての、深い理解が求められるのです。