デリバティブ取引


■デリバティブ取引とは


デリバティブ取引とは、株式、為替、商品、債券金利などの原資産から

派生した金融商品の取引のことです。


デリバティブ取引には、先物取引、オプション取引、スワップ取引などがあります。


先物取引とは、将来のある時期に一定の価格で買う又は売ることを取引時点で契約を

するデリバティブ取引です。


デリバティブ取引は、小さな投資金額で大きな取引を可能にし、

投資額の数十倍~数百倍の取引を可能とするレバレッジ効果があります。


デリバティブ取引のデリバティブとは、金融派生商品のことです。


企業においてデリバティブ取引を管理するのは、財務部の役割です。


国際スワップデリバティブ協会では、デリバティブ取引の発展と取引の効率化、

リスク管理体制の強化などを目的とする公的な機関です。


このデリバティブ取引は、当初はリスクヘッジ機能として利用されることが

多かったのですが、現在では、市場や市場間の歪みを利用する取引である

裁定取引(鞘抜き、アービトラージ)や、投機(スペキュレーション)に

利用されることが多くなっています。


以前の会計処理では、デリバティブ取引は、当該取引決済まで

損益が認識されることがなくオフバランス処理されていました。


しかし、突然巨額損失が発生することが各企業で頻繁に起こるようになったため、

現在では、デリバティブ取引を企業で会計処理をする際は、財務諸表に

ただちに反映される時価主義会計が適用されています。


この会計処理の概要は、デリバティブ取引の契約締結時からその発生を認識し、

デリバティブ取引の決済が終了するまで、毎期末のデリバティブ取引の時価を、

バランスシートに計上し、デリバティブ取引の評価損益を損益計算書に

反映することになっています。


現在は、企業が粉飾決算をしていない限り、デリバティブ取引は正しく

企業の決算書に盛り込まれています。


■デリバティブ取引の種類

・オプション取引

オプション取引とは、あらかじめ決定された将来のある時期に、

一定の価格で買う又は売る権利を売買するデリバティブ取引です。


オプション取引は、権利行使のできるタイミングなどの違いで、

ヨーロピアンタイプ、アメリカンタイプ、バミューダンタイプの

3つに分類することができます。


オプション取引の際は、オプション料(プレミアム)を売買することになりますが、

このオプション料(プレミアム)の価値は、本源的価値と時間的価値で構成され

ています。


このオプション取引は、私達が病気になった時、万が一死亡した時、

不慮の事故に備えるなどの為に加入している生命保険や損害保険と

同じような性質を持っています。


また、オプション取引は、偶発債務ともいえます。


私達が加入している生命保険などは毎月1万円前後の保険料を支払うことで、

もし私達が死亡した場合は数千万円の死亡保険金が遺族に支払われる

ことになります。


オプション取引でも、金融資産などの下落のヘッジの為にプットオプションを

買っておくと、金融市場がパニックを起こした際に保有する株式などの有価証券の

価格が暴落した場合でも、購入しているプットオプションの価値が急上昇している

ので、保有している株式などの有価証券の価格下落のヘッジ機能の役割をはたして

くれます。


また、オプション取引は、コール(Call)又はプット(Put)を買うか

売ることになるのですが、その取引種類としては、コールオプションの買い、

コールオプションの売り、プットオプションの買い、プットオプションの売り

の4種類があります。


オプションの原資産価格が値下がりした場合に利益がでるオプション取引は、

コールオプションの売りとプットオプションの買いがあります。


コールオプションの売りは、利益は限定されていて、損失は理論的には無限です。


プットオプションの買いは、損失は購入したオプション料(プレミアム)に限定され、

利益は理論的には無限であるため、生命保険の仕組に内容が似ています。


また、オプションの原資産価格が値上がりした場合に利益がでる

オプション取引は、プットオプションの売りとコールオプションの買いです。


プットオプションの売りは、利益は限定されていて、損失は理論的には

無限です。


コールオプションの買いは、損失は購入したオプション料(プレミアム)に限定され、

利益は理論的には無限です。


尚、オプション取引の際に売買するオプション料(プレミアム)には、

本源的価値と時間的価値がありますが、オプションを権利行使できる

期間は事前に決まっている為、仮に、原資産価格が横ばいで推移しても、

オプション料の時間的価値の部分は時間の経過と共に価値が減少します。


・スワップ取引

スワップ取引とは、あらかじめ取引当事者間で合意された条件に基づいて、

将来のキャッシュフローを交換する取引のことです。


スワップ取引は、デリバティブ取引(金融派生商品取引)の1つで、

価格変動リスクをヘッジする目的等で利用される取引です。


スワップ取引の種類としては、金利スワップ取引、通貨スワップ取引、

コモディティスワップ取引、クーポンスワップ取引などがあります。


このスワップ取引の計算の際に使用される想定元本とは、将来のキャッシュフロー

を計算するためだけに決められている元本のことで、想定元本自体は、実際に支払

が行われたりすることはありません。


・通貨スワップ取引

通貨スワップ取引とは、異なる種類の通貨間で将来の金利と元本を交換する

デリバティブ取引(金融派生商品取引)のことです。


通貨スワップ取引は、カレンシースワップ取引や為替スワップ取引

とも呼ばれています。


また、身近な通貨スワップ取引には、FX取引と呼ばれている外国為替証拠金取引

があります。


FX取引では、例えば、円を売って米ドルを買う場合は、円でお金借りて円を売り、

その円を売って得た資金で米ドルを買う取引をしているので、FX取引をしている

個人投資家は、円と米ドルの通貨スワップ取引をしていることと同じなのです。


尚、国家間においても通貨スワップ取引に似た通貨スワップ協定が利用されています。


そのような取引の一例として、リーマンショックが起こった時に、韓国では通貨ウォン

が大幅に下落して通貨危機が発生しましたが、日本は、韓国の信用を補完する為に、

2008年12月に日韓通貨スワップ協定を締結しました。


ちなみに、通貨スワップ協定とは、自国通貨が暴落して外貨不足に陥った国に対して

外貨の融通を行う協定のことで、通貨スワップ協定は、中央銀行間の協定です。


通貨スワップ協定の内容としては、2国間で直接外貨を融通し合うスワップ取り決めと、

外債を売却して一定期間後に買い戻すレポ取り決めがあります。


・金利スワップ取引

金利スワップ取引とは、同じ種類の通貨間で異なる種類の金利を交換する

デリバティブ取引(金融派生商品取引) のことです。


金利スワップ取引は、金利変動リスクを回避すること等を目的として利用されています。


最近、個人投資家に人気のあるFX取引では、金利スワップは、スワップポイント

ともいいます。


また、金利スワップ取引は、取引をする時点での市場金利相場に基づいて、

固定金利を支払った場合とと変動金利を受け取った場合のキャッシュフローの

現在価値が等価になる水準で取引されます。


現在価値を算出する際に用いる割引率は、取引をする時点での変動金利となります。


尚、スワップ契約受払日に金利スワップを受け取ったり支払ったりした場合は、

金利スワップ損益を計上します。


金利スワップ取引の時価評価とは、決算期末の市場金利相場に基づいて、

金利スワップ取引に生じた差益や差損を計上することです。


ヘッジ会計が採用されている場合は、金利スワップの損益を認識せず、

借方が金利スワップ、貸方が繰延ヘッジ利益、借方が繰延ヘッジ損失、

貸方が金利スワップとして会計処理されることになります。


ちなみに、大手銀行と中小企業との金利スワップ取引は、最近社会問題化し訴訟

にまで至るケースがあります。


この問題は、大手銀行が中小企業に対して強い立場であることを利用して、

金利スワップを販売し、中小企業が相場の変動により多大な損失を被った

ことが原因です。


大手銀行と中小企業との金利スワップ取引での訴訟では、金利スワップ取引の

説明義務違反と大手銀行の優越的地位の濫用が主な争点となっています。


・クーポンスワップ取引

クーポンスワップ取引とは、元本交換をしないデリバティブ取引のことです。


クーポンスワップ取引は、輸出を行う企業や輸入を行う企業が、為替リスクを

ヘッジする為に利用しています。


クーポンスワップ取引は、一般的に、オーストラリアドルなどの金利の高い

通貨を利用した取引が多く行われました。


ちなみに、イタリア料理チェーン店のサイゼリヤは、サブプライムローンの問題が

起こった2008年に豪ドルのクーポンスワップ取引で約153億円の巨額損失を計上

しています。


また、以前は、為替リスクを軽減する為の方法としては、為替予約しかなかった

のですが、クーポンスワップ取引が開発されてからは、クーポンスワップ取引を

貿易取引の為替リスクヘッジの手段として利用する企業が増えています。


尚、長期のクーポンスワップ取引は、想定外に相場の変動が大きくなってしまうと

巨額損失を招く可能性がありますので、デリバティブ取引を利用する際は、仕組みを

理解した上で活用する必要があります。


・コモディティスワップ取引

コモディティスワップ取引とは、石油やプラチナ・金・銀・銅等の非鉄金属等の

商品価格を対象としたデリバティブ取引のことです。


コモディティスワップ取引は、商品の価格変動リスクを回避することを

目的とした取引です。


また、コモディティスワップ取引は、対象とする商品の定められた量の固定価格の

支払と変動価格の支払を交換する取引で、コモディティスワップ取引の仕組みは、

金利スワップ取引等と同じです。


コモディティスワップ取引には、下記の様な種類があります。


コモディティスワップ取引の種類

・原油スワップ取引
・液化天然ガススワップ取引(LNGスワップ取引)
・プラチナスワップ取引
・金スワップ取引
・銀スワップ取引
・銅スワップ取引


尚、コモディティスワップ取引は、LMEの現物スポット価格を原資産としたり、

WTIインデックスを原資産としています。


■デリバティブ取引に関するその他事項

・想定元本

想定元本とは、デリバティブ取引において、契約時に決済をする際のキャッシュフローを

算出する為に必要な名目上の元本のことです。


想定元本は一度決定すると変動したりすることはありません。


この想定元本は、ほとんどのデリバティブ取引においては、想定元本自体を交換

することはありません。


想定元本がどんなに大きくなったとしても、その金額自体にはあまり意味が

ありませんので、一般的に、想定元本がとてつもなく大きな金額であったとしても、

その金額自体を受渡しすることがなければ、想定元本が生み出すキャッシュフローの

金額だけを考慮すればよいわけです。


・国際スワップデリバティブ協会

国際スワップデリバティブ協会とは、金融派生商品取引の発展と取引の効率化、

リスク管理体制の強化などを目的とする公的な機関です。


ISDAとは、国際スワップデリバティブ協会の略称です。


この国際スワップ・デリバティブ協会の構成会員は、銀行、証券会社、証券取引所、

事業法人、政府系機関、中央銀行などで構成されています。


EUによるギリシャ支援であるギリシャ国債のヘアカット(債務元本減免)で

問題になっていたことが、CDSの行使条件です。


・レバレッジ効果

レバレッジ効果とは、てこの原理を利用することで、小さな力でも

大きく重いものを動かすことが出来る例えとして、経済や金融の世界でも

使われている比喩的表現です。


経済や金融の世界でのレバレッジ効果は、少ない自己資本で大きな他人資本を

利用することで自己資本利益率や総資産利益率を高めることを意味します。


レバレッジ効果は、他人資本を増加させレバレッジ比率を高めれば、

更にその効果は大きくなります。


このレバレッジ効果は、企業経営以外では、金融の世界では幅広く

利用されています。


金融商品でレバレッジ効果がある主なものとしては、株式の信用取引、

株価指数先物取引、株価指数オプション取引、商品先物取引、外国為替証拠金取引

などがあります。


レバレッジ効果の小さなものでは、株式の信用取引の保証金に対して3倍程度の

レバレッジのものから、レバレッジ効果の大きなものでは、株価指数先物取引の

証拠金に対して数百倍のレバレッジのものまで存在します。


また、レバレッジ効果を高めれば、大きな利益を獲得できる可能性が

高まる反面、大きな損失に繋がる可能性もあります。


個人投資家が自己資金に比べてあまりにもレバレッジ効果が高い金融商品を

取引した場合、数%の価格変動で自己資金を全て無くし、場合によっては借金まで

背負ってしまう可能性があります。


また、企業も、あまりにも高いレバレッジ効果を求め、財務レバレッジを高める

ことになるレバレッジ比率を大きくしすぎると、大きな損失を被る可能性も高まります。


大きな損失を被ると、場合によっては債務超過にもなりかねず、また、巨額な損失は、

資金繰りにも深刻な影響を与え、経営の屋台骨を揺るがす事態になりかねません。


このように、企業経営や財務戦略において、このレバレッジ効果を

どのように活用していくかは企業にとって重要な課題になります。