BIS規制


■BIS規制とは


BIS規制とは、銀行の健全性確保を目的として、海外に営業拠点を持ち国際業務

を行う銀行の自己資本比率に一定の規制を設けている国際統一基準のことです。


国際決済銀行が定めている自己資本は、基本的項目・補完的項目・準補完的項目

で構成されています。


国際決済銀行とは、世界各国の中央銀行が通貨価値や金融システムの安定を支援し

国際協力を推進するための銀行です。


国際決済銀行は、各国の中央銀行が株主となっており、国際決済銀行の略称がBISです。


BIS規制は、自己資本の測定と基準に関する国際的統一化にもとづく、

いわゆるバーゼル合意に基づいた国際的規制です。


企業においてBIS規制を調査するのは、財務部の役割です。


この国際決済銀行が定めている自己資本の項目は下記の通りです。


BIS(国際決済銀行)が定めている自己資本の項目

・基本的項目(Tier1)
・補完的項目(Tier2)<永久劣後債・永久劣後ローン・劣後債・劣後ローンも含む>
・準補完的項目(Tier3)<期限付劣後債・期限付劣後ローンも含む>


Tier2とTier3の合計額は、Tier1を超えてはならないルールがあります。


また、BIS規制がバーゼル規制やバーゼル合意といわれるのは、国際決済銀行の

バーゼル銀行監督委員会が公表した規制であるからです。


このBIS規制では、国際業務を行う銀行の自己資本比率を最低8%と定めていますが、

バーゼルII自己資本比率規制では信用リスクの計算をより厳密にする為に、事務ミスや

不正行為等によって損失を被るリスクであるオペレーショナルリスクを対処とした

新しい自己資本比率規制が導入されています。


国際統一基準による自己資本比率の計算式

自己資本(Tier1+Tier2+Tier3-控除項目)÷リスクアセット×100%


なお、日本では、国内業務のみを行う銀行に対して、自己資本比率4%という規制が

設けられています。


BIS規制の経緯

・1988年 BIS規制合意(バーゼルI 合意)
・1996年 市場リスク規制・トレーディングリスクの追加
・1998年 BIS規制見直し開始(バーゼルI の見直し開始)
・2004年6月 BIS規制見直し合意(バーゼルII 最終合意)
・2007年3月 BIS規制見直し適用開始(バーゼルII 適用開始)
・2009年12月 新BIS規制案公表(バーゼルIII 市中協議案公表 )
・2010年7月 新BIS規制改革パッケージ合意(バーゼルIII 規制改革パッケージの合意)
・2010年9月 新BIS規制改革最低自己資本基準合意(バーゼルIII 最低自己資本基準合意)
・2010年11月 G20で新BIS規制包括的承認(バーゼルIII 包括的パッケージ承認 )
・2010年12月 バーセル銀行監督委員会が新BIS規制文書公表 (バーゼルIII 最終文書公表 )


■BISが定めている自己資本の項目

・基本的項目

基本的項目とは、国際決済銀行がBIS規制にて自己資本比率に一定の規制を設けている

自己資本の項目のことです。


基本的項目は、資本金・法定準備金・利益剰余金などから構成される、株主資本・

連結子会社・海外SPC発行優先出資証券・為替換算調整勘定・少数株主持分等の

合計額から営業権に相当する額等を控除した金額です。


この基本的項目は、Tier1とも呼ばれています。


その他で定められている自己資本の項目には、補完的項目・準補完的項目があります。


・補完的項目

補完的項目とは、国際決済銀行がBIS規制にて自己資本比率に一定の規制を設けている

自己資本の項目のことです。


補完的項目は、不動産の再評価額の45%相当額・貸倒引当金・永久劣後債・

永久劣後ローン・原契約期間5年超の期限がある劣後債と劣後ローン・期限付優先株

・有価証券含み益 45%相当額等の合計額です。


この補完的項目は、Tier2とも呼ばれています。


・準補完的項目

準補完的項目とは、国際決済銀行がBIS規制にて自己資本比率に一定の規制を

設けている自己資本の項目のことです。


準補完的項目は、原契約期間5年以内の期限付劣後債と期限付劣後ローンの

合計金額です。


この準補完的項目は、Tier3とも呼ばれています。


また、期限付劣後債と期限付劣後ローンは下記の条件を満たしていると準補完的項目

と認められます。


・無担保且つ、他の債務に劣後する払込済みのものであること
・原契約期間が2年以上残っていること
・約定された償還日以前に償還されないこと
・自己資本が不足した際に、利払いや償還ができない特約があること


・オペレーショナルリスク

オペレーショナルリスクとは、事務ミスや従業員の不正行為等、コンプライアンス体制

の不備、災害等の予期せぬことにより企業活動が中断して被る損失等の通常の業務遂行

を起因として発生する損失のリスクの総称のことです。


BIS規制では、オペレーショナルリスクを対処とした新しい自己資本比率規制が導入

されています。


・リスクアセット

リスクアセットとは、資産に対する損失可能性である貸倒れの危険性の総量のことです。


BIS規制におけるリスクアセットを算定する際は、資産の種類に応じてリスクウエイト

を乗じた後に合計します。


主なリスクウエイトとしては、下記の通りです。


主なリスクウエイト

・現金や政府向け融資や国債は0%
・銀行向け融資は20%
・抵当権付住宅ローン35%
・個人の住宅ローンは50%
・企業向け融資は100%


このリスクアセットには、オンバランス資産だけを対象とするのではなく、

デリバティブ取引などのオフバランス資産も含める必要があります。


・オンバランス資産

オンバランス資産とは、企業の財務諸表である貸借対照表に計上されている

資産のことです。


BIS規制におけるリスクアセットを算定する際は、オンバランス資産だけを

対象とするのではなく、スワップ取引やオプション取引などのオフバランス資産

も含める必要があります。


・オフバランス資産

オフバランス資産とは、企業の財務諸表である貸借対照表に計上されていない

資産のことです。


BIS規制におけるリスクアセットを算定する際は、オンバランス資産だけを

対象とするのではなく、スワップ取引やオプション取引などのオフバランス資産

も含める必要があります。


■BIS規制と格付けの矛盾


リーマンショック後に、ムーディーズやスタンダードプアーズ等の格付機関

によるのEU加盟国の格下げが相次いでいます。


当然、格付機関の格付けが全て正しいとは思いませんが、EU加盟国の

格下げは妥当なことでしょう。


しかし、ここで考える必要があることは、格付機関が格付けしていることは、

格付け対象の国等が発行している債券の償還を確実にすることが可能かどうかを

ランキング形式で評価している点です。


格付けが下がるということは、債券を償還する可能性が低くなるということであり、

リスクが高まるということになります。


これに対して、BIS規制とは、銀行の健全性確保を目的とした規制です。


BIS規制における自己資本比率を算定する際は、資産の評価を厳しくする必要が

あると思うのですが、BIS規制の自己資本比率算定の際の国債の評価は、

無リスクで評価するということになっています。


この点に、BIS規制と格付けの矛盾があるわけです。


BIS規制と格付けの意図するところの本質はそれほど変わるはずのものでは

ないと思いますが、格付機関では、債券を償還する可能性が低くなるとして格付けを

下げているにもかかわらず、BIS規制においては、国債のリスクに関して無関心に

なっているのです。


たしかに、現在の世界経済と金融システムの根幹を揺るがすことを、国際決済銀行が

することはできないのかもしれません。


しかし、このような杜撰なBIS規制を改革しなければ、このつけは、一般企業や個人に

多大な損失をもたらすことになるでしょうから、早急に、BIS規制を改革し、世界経済と

金融システムを守る枠組みを再構築してもらいたいものです。