安全性分析と自己資本比率


現在、取引関係がある会社や、これから取引をしようとする会社に関して、

最も気になることとしては、その企業の支払能力につきるでしょう。


ビジネスをするうえで、商品やサービスの代金が回収不能になることは、

企業としては、最も避けたいことの1つといえますので、企業においては、

取引相手の支払能力を判断することは、非常に重要なことなのです。


そこで、既存の取引先や、これから新規に取引をはじめる会社の支払能力を

分析することになるのですが、その際に、企業の支払能力について経営分析する

手法が安全性分析になります。


この安全性分析の手法には、静態的分析であるストック分析と、

動態的分析であるフロー分析がありますが、一般的に、最も知られている

分析手法が、自己資本比率を評価する手法です。


安全性分析=自己資本比率と呼べる位、自己資本比率は、企業の安定性を

評価できる財務指標であると考えている方が多いのですが、本当にそうなの

でしょうか?


自己資本比率とは、会社の総資産に対する自己資本の比率のことなので、

自己資本比率が高いということは、負債が少ないことを意味していますので、

一見すると会社の安定性は高いように見えます。


しかし、自己資本比率が高い企業が、必ずしも支払能力が高いとは

いえないのです。


なぜなら、仮に自己資本比率が90%の企業であったとしても、

資産の99%が直ぐに現金化できない固定資産だったら、支払能力が高い

とはいえませんよね。


いくら自己資本比率が高くても、資産の大半を固定資産が占めている

ようでは、支払能力が高いとはいえないので、ストック分析では、

流動比率や当座比率といった、その他の財務指標も確認する

必要があるのです。


流動比率や当座比率は、さしあたっての支払可能資金がどれくらい余裕

があるかを示している財務指標ではありますが、これらの指標を確認しても、

支払能力の把握には限界があるのです。


その理由は、ストック分析とは、ある時点における、資産と負債を分析

するだけなので、キャッシュ創出能力については、分析することが不可能

だからです。


そうすると、企業の安全性分析においては、自己資本比率、流動比率、

当座比率などの静態的分析をしても、企業の支払能力が明らかになる

ことはありませんので、動態的分析であるフロー分析が必要になります。


動態的分析であるフロー分析でやるべきことは、大別すると、資金表を

作成することと、回転期間を分析することです。


安全性分析において、最も重要になってくるのは、企業のキャッシュ創出能力

についての分析なので、企業のキャッシュフローの現状を把握するためには、

バランスシートと損益計算書を組み合わせた分析が必要になり、その分析手法

こそが、回転期間分析と資金表分析なのです。


資金表分析とは、キャッシュフロー計算書、資金運用表、資金移動表を作成し、

資金収支の概要を把握する為の分析であり、この資金表分析では、資金表を

1年分だけ作成しても、分析対象企業のキャッシュ創出能力の変化を掴むこと

ができませんので、最低3事業年度分の資金表を作成する必要があります。


資金表は、資金収支の概要を把握できるに留まりますので、資金収支が

良くなっている原因や悪くなっている原因を究明するためには、回転期間分析

が必要になってきます。


この回転期間分析をすることで、分析対象企業のキャッシュ創出能力の

どこに問題があるのかも把握することができますし、回転期間分析をすれば、

分析対象企業において、財務管理が適切にされているかどうかもおおよそ

察しがつきますし、分析対象企業に、財務に強い人間がいるかどうかも

明らかになります。


安全性分析においては、自己資本比率などのストック分析だけでは、

最も重要になるキャッシュ創出能力の把握をすることができませんので、

必ず動態的分析であるフロー分析をする必要があるわけです。